ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年05月26日
 ああもう、ちくしょう、おもしれえな。1巻の時点で、かなりのファニーが満載されており、とてもとても油断ならなかった佐藤ざくりの『おバカちゃん、恋語りき』であるけれど、その印象は2巻になろうがちっとも変わらない。急展開に次ぐ急展開、そして、どうしようもないギャグ、概要はいっけんトリッキーであるのに、一周して、じつにオーソドックスな少女ラブコメにも思われてしまう内容は、つまり、たいへんおもしろい、という感想に尽きる。しかしそれにしても、こういうストーリーの運びになるかい。関西ではケンカ最強の女として知られ、恋愛とは無縁の青春を過ごさなければならなかったため、素性を隠し、関東の高校へ編入してきたヒロインの園田音色だったが、せっかくの猫かぶりもすぐに露見、問題児ばかりを集めた「特殊科」通称「バ科」に加えられてしまう。結局、かつてと同じく、もてない日々を送る羽目になるところだったのだけれども、特進科の相澤深に向けた一目惚れが、まさか叶い、念願のラヴ・カップルを成就させる。一方、「特殊科」のクラスメイトで、深とも浅からぬ因縁を持つ不良の栄山トキオも、じつは音色に好意を寄せていて、彼女彼らの高校生活は、波乱含み、賑やかさを増してゆく。それがまったくコメディのようにあらわされているのだが、ここでは、どうして深が音色と付き合うつもりになったのか、じつは暗い企みを持っていたとあきらかになるのに合わせて、わりとシリアスなエモーションが入り込んでくる。そもそも、ひじょうに喜劇性の高い物語において、恋愛に対する真剣のモードが、作中人物たちの情緒や、緊張を担っているマンガである。それがさらにはなはだしくなることで、性急なテンポのなか、理想的なテンションがつくり出されている。個人的には、『おバカちゃん、恋語りき』の1ページ1ページを、じつに楽しみながらめくっているとき、この、テンションを読んでいるという感覚がつよい。音色、深、トキオの、ややこしく絡み合うかっこうが、いわゆる三角関係の力学をベースとしていることに、異論はないだろう。舞台を学園に限定した三角関係のドラマは、半径の狭い世界そのものの密度を濃くしていくしか、表現を巧みにする術がないのだけれども、多くの場合、スキャンダルのせこさに内面のしょぼさが比例してしまい、わざわざ、といったていのオーヴァーなカットを挟むことで、やたら深刻ぶり、何とか体裁を取り繕うとする。『おバカちゃん、恋語りき』もまた、そうした様式からは決して逃れられていないのかもしれないが、ハイにキープされたテンションは、せこさや、しょぼさをも、あらかじめ、ばかばかしさの内に織り込み済み、チャーミングなノリで括ってしまうほどの効果を発しており、心覚えのある怠さに白けるということがないのだった。ところで、欄外コメント、津村記久子や山崎ナオコーラ、金子光晴を最近の愛読書に挙げている作家が、こうしたマンガを描くのは、なるほど、わかるようなわからないような気もする。

 1巻について→こちら

 『otona・pink』2巻について→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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