ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年05月04日
 街中で血が流れているようなとき、片隅にたたずんでいる君が、想像力などと言って頭を抱えていたところで、不幸がなくなるわけではないし、不幸な世界が変わってくれるわけでもないのに、悩むことに意味があるというなら、ねえ、教えてよ、その意味をはやく教えてよ、と思う。さあ、現在展開中の「ワークマンズ」編も、この16巻に入り、毎度の例にならって、いよいよ芳しくなくなってきた柳内大樹の『ギャングキング』であるが、さすがにここまでシリアスなテーマを持ってきておいて、作品がどこへ向かっているか、まったく見通せないのが、辛い。まさかまた、紋切り型のポエムで言わんとしていることをぜんぶ言ったら、事態が収拾しちゃうんじゃないだろうね。アラーキーとチャンベのケンカから波紋はひろがり、「バラ学」の生徒たちと肉体労働する同世代たちとが全面的な衝突を繰り返し、次第に状況を悪化させてゆくなか、我らが主人公のジミーは、ふたたび優雅な自分探しのモードを満喫するのだった。自分でまとめておきながら、すげえあらすじだな、これ。しかしどうしてこうなってしまうのか。キー・パーソンである人物が入院し、面会がかなわないため、誤解に誤解が重なったあげく、種々の亀裂がエスカレーションするさまは、おそらく、ハロルド作石の『ゴリラーマン』の、あの館井に急襲された藤本が重傷を負うくだりの応用である。チャンベと相対したバンコが〈テメエ 身軽なタイプのデブだな!〉と述べるのも、直接的な元ネタは『ゴリラーマン』だろう。そしてこの巻では、作画の面に顕著なように、井上雄彦の、しかも『リアル』あたりの影響が混じってきている。ヘドロベロは、完全に井上のタッチだ。言うまでもなく、『ゴリラーマン』とは、限られた学園生活のなかを右往左往する十代の物語であった。これに対し、『リアル』とは、ハンデキャップの文脈をべつにすれば、学園生活の外へと追われ、はからずも社会と向き合わなければならなくなった十代の物語にほかならない。こうした二極のミックスが、『ギャングキング』における「ワークマンズ」編である、と、ひとまずの解釈を与えても問題はあるまい。むしろ、そうした取り組みに志の高さを買うことさえできる。だが、肝心の内容がそれについていっていないのは、やはり、参照している作品の上辺だけをすくい取り、足して引いてしている以上のサムシングが見られないためである。15巻の段階で、何気なくフォーカスを合わせられていたサイコやゴリが、重要な役割になってきているとおり、たぶん、作者の頭のなかにはある程度の設計図が用意されていたにちがいない。その設計図がどれだけ緻密であるのかは、当然、知れないが、じっさいのマンガを読むかぎり、あまりよく生かされているとは感じられない。チャンベが、保険に入っていない事故を起こしてしまったせいで、2億6千万もの賠償金を払わなければならないというのも、じつにすさまじい話であるけれども、金額設定の間違いでないのならば、未成年に2億6千万もの大金が課せられるとはよっぽどのことであって、にもかかわらずそれに関する当事者の意識があまりにも低すぎる。もちろん、のちのちのことを踏まえ、あえてそうしている可能性もある。まだ十代でしかない人間の狭さ、幼さをあらわそうとしているのだとしてもよい。チャンベを追いつめる「バラ学」の面々の〈俺達がガキでオメー等が立派な大人だっつーんならよぉ……最初っからクビになるよーなモメごとに首つっこまねーで大人しくしてりゃーよかったんだよ〉〈中途半端に都合のいい時だけガキに戻ってんじゃねーよバカ……〉という言葉は、意外な口から出た真理だろう。しかるにこれがどう解決されるのか、すくなくとも想像力想像力述べてるだけの主人公に期待するものがないので、物語も魅力的になっていかない。せいぜいが、ケンカが強ければヤクザも怖くない、肉体労働しているからケンカが強い、ってロジックの単純明快さに圧倒されるのみである。

 15巻について→こちら
 14巻について→こちら
 13巻について→こちら
 12巻について→こちら
 10巻について→こちら
 9巻について→こちら
 8巻について→こちら
 7巻について→こちら
 6巻について→こちら
 4巻について→こちら
 3巻について→こちら

・その他柳内大樹に関する文章
 『柳内大樹短編集 柳内大樹』について→こちら
  「バンカラボーイズ」について→こちら
  「オヤジガリガリ」について→こちら
 『ドリームキングR』(原作・俵家宗弖一)
  4巻について→こちら 
  3巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『ドリームキング』
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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