ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年05月03日
 肉の唄 1 (1) (ヤングマガジンコミックス)

 コウノコウジ(こうのこうじ)の本領とは何か。作者の過去作、ボーリングを題材にしたコメディ型の青春劇『カラコカコ〜ン』や、筋金入りヤクザが少年野球の監督に転身するヒューマン・ドラマ・ライクな『アウト・ロー』を並べてみるに、まあ後者は原作付きではあったものの、絵柄のむさ苦しさからしてすでに、一種のハングリーさ、それも現代を舞台にすることで著しさを増すようなハングリーの精神なのだと思われる。この新作『肉の唄』も、1巻を読むかぎり、その線が貫かれている。おそらくは本格的な格闘マンガとして読まれたい内容なのかもしれないが、何かを手に入れようとし、惨めであるほどに、無粋であるほどに、執着の炎を燃やす主人公の姿が、まず第一に、作品の骨格をつくっているのである。物語は、一人の青年が、金欲しさのため、プロレスの団体に道場破りを仕掛けることで、幕を開ける。もちろんその青年には勝算があった。なぜならば彼は、今は総合格闘技の世界から追放されてしまったが、「霊長類史上最強」の男、森戸定治に、かつてただ一人、勝利したことで知られる一色亮太だったのだ。当然、プロレスなんて八百長の連中に負けるはずがないと考えていた。しかし乗り込んだ「新世界プロレス」で、時間無制限のヒンズースクワット勝負を挑まれ、予想だにしなかった苦戦を強いられる。登場人物の一人が、プロレスを指して、地上最強の即興芸術と述べているように、真剣勝負(シュート)とはべつの体系で測られるべきプロレスの強さ、ポテンシャルのすさまじさが、作中のロジックを支えているのだけれども、現時点では、その理屈の、ややくどく、迂遠なところが、冗長に間を延びさせており、主人公のハングリーさは、無目的で無自覚なまま、空回りしているふしがある。両者がかっちりと組み合ったとき、すばらしい化学反応が起こることを期待したいが、それはしばらく先のことになりそうである。すくなくとも格闘マンガ的なカタルシスはお預け、もちろん、作者の狙いが安易なカタルシスではなかったとしたところで、読み手の関心を一手に引き受けるまでの世界観は、まだ十分に構築されていない。

 『アウト・ロー』(原作・木内一雅)13巻・14巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのTrackBack URL
http://blog.seesaa.jp/tb/118568135