ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年01月17日
アクアポリスQ

 濡女とは何か? 牛鬼というのは? 津原泰水『アクアポリスQ』は、とある都市を壊滅から救う少年の活躍を題材とした小説である。とある都市という部分は、世界という言葉に置き換えてしまってもいい、と思う。ある程度のアッパー・クラスに属する人間が、必然なのか偶然なのか、世界の秘密と暗部に関わり、トラブルの連続をブレイクスルーすることで成長を遂げる、といった構造は、まさにビルドゥングス・ロマンの王道ではあるのだが、しかし、これが、なかなか、読ませる。サクサクと話の進むリーダビリティの高さはもちろん、量子コンピューターACE、水没都市Q市、巨大人工島アクアポリス、シーチューブ、統治府、SSS、暦としての虚無前と虚無後、ペールとルーラとエンプティ、モンスタレーション、そしてフュージョンなどなど、そのような諸要素の設定がばっちりと決まっている部分も大きいけれど、たとえばある登場人物が「もっともここにおいて、時間の経過は意味を持ちません。偏在する自我に対して、あなたが序列をもうけているに過ぎない」というように、物語の複数性(と東浩紀ふうに言うのであれば)、それが自然なかたちで小説内に取り込まれているからこその、センス・オブ・ワンダーとリアリティが同居している、がゆえに、魅力的な作品となっているのである。また、もうひとつ良質なところを挙げるとしたら、それは、子供の進むべき道を、親がその生き様のうちに、あらかじめ指し示している、といった点になるだろう。そのため、大人になること、つまり経験を積むことが、けっしてネガティヴなものとして機能しない、「信じられる方向に進め」というメッセージは、ひと足先に作られた現実に他ならない、要するに、未来だ。「こうしてアンバランスを増していくことが、大人になるということなのだろうかと、彼は未来に恐怖していた」としても、彼は、エレヴェーターの前に立ち、向かう先を「上」だと、力強く告げる。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(06年)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック