ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年04月19日
 Crooked Timber

 そこらへんの坊ちゃんが演じているような疑似ルサンチマンなんて簡単に蹴っ飛ばしちゃう。これがまじもんのパワーってやつなんだぞ。何の話かといえば、北アイルランドはベルファスト出身のトリオ、THERAPY?の通算10作目となるフル・アルバム『CROOKED TIMBER』のことなのだが、その、相変わらず多幸感とは縁遠そうな、無愛想にやたら強張ってひずんだサウンドには、にひひ、という下卑た笑いを、そしてとても嬉しくさせられる。80年代の終盤に登場し、およそ20年のキャリアは、十分ベテランの域であるのに、根本的なスタンス、つまり恨めしや、と歯ぎしり、イーヴルで根暗なアティテュードは、折れ曲がらず、いやそもそも折れ曲がっていたそれは、決して矯正されることもなしに、いまなお全うされていることが、音によって伝わってくるのである。同世代もしくは同時代のアーティストのほとんどが、リタイアするか、さもなくば以前とは様変わり、マイルドになっていきがちななか、このバンドの、とくに中心人物であるアンディ・ケアーンズの、ルックスも含め、はなはだごつごつとしているところは、一貫して一周して、抜群にかっこうがいい。とはいえ、ここで採られているのは、90年代後半の『INFERNAL LOVE』や『SEMI-DETACHED』みたいなグランジ・ポップでもないし、最近の数作において顕著だったガレージィなロックン・ロールともまた違う。しいて述べるなら、THERAPY?式のドゥームといおうかゴシックといおうか、どす黒い情念があたかも、ヘヴィで分厚いグルーヴとして渦巻き、あらわされているかのようなアプローチだと思う。1曲目の「THE HEAD THAT TRIED TO STRANGLE ITSELF」からしてあきらかなとおり、リズムのありようにかなりのインパクトが預けられている。まあ、リズムに関しては、元来クセのあるグループではあったが、その特徴的なセンスを前面に出し、ビルド・アップ、フルに稼働させることで、さらに強力なアンサンブルをつくり上げているのだった。03年の『HIGH ANXIETY』でメンバーに加わったニール・クーパーがドラムで果たしている役割はおおきい。もともとはTHE BEYONDというイギリスのバンドで、プログレッシヴなパターンを叩いていた人物だけあって、手数の多さもさることながら、激しいアタックを次々、ジャストなタイミングで決める。ギターのリフ、ベースのラインも、マッシヴなノイズを支援する一方でシンコペーションを細やかにしており、おそらくGANG OF FOURのアンディ・ギルがプロデューサーに呼ばれたのも、こうした方向性に関係してのことであろう。きわめてパーカッシヴな成り立ちをしているため、ハードコアをジャンク化させた初期の頃のイメージに近しい部分もあるにはあるけれど、線の太さ、禍々しいまでの迫力に、歴然の差がある。ソング・ライティングの完成度もそうだし、憎しみであれ何であれ、負のエモーションを技術的に高めていくと、なるほどこうなるのか、という気もする。たしかに、以前の作品にはあって、ここではなくされてしまった良さもある。が、すくなくとも、うつくしさやあたたかさ、やさしさのレベルでは判断されない表現の質、濃度、密度は高まっている。ブックレットにあるように、アルバムのタイトル『CROOKED TIMBER』は、カントの引用である。そしてまさしくサウンドは〈From the crooked timber of humanity, no straight things was ever made〉だということの産物になっている。

 『MUSIC THROUGH A CHEAP TRANSISTOR THE BBC SESSIONS』について→こちら
 『ONE CURE FITS ALL』について→こちら
 『NEVER APOLOGISE NEVER EXPLAIN』について→こちら

 バンドのオフィシャル・サイト→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(09年)
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