ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年04月06日
 ゆうやみ特攻隊 4 (4) (シリウスコミックス)
 
 藤田和日郎が、『ぱふ』4月号の「まんが家180人大アンケート」、「2008年に読んだまんがのなかで、印象に残った作品を教えてください」という質問に答えて、押切蓮介の『ゆうやみ特攻隊』を挙げている。いわく〈スゲーわ。恐怖とアクションがかっこ良すぎ〉なのであって、恐怖とアクションに関しては一時期きわどくすぐれていたマンガ家に、〈スゲーわ〉と褒めさせるぐらいのインパクトが、『ゆうやみ特攻隊』には、たしかに、ある。そしてそれは、この4巻に入っても、ぜんぜん衰えていない。なぜ姉は死ななければならなかったのか、真相に近づこうとして、心霊探偵部の面々、隊長(花岡)やカエ(かえで)、心霊犬の2号とともに、黒首島へと渡った翔平であったが、悪霊の恐怖によって島中を支配する鉄一族に逆らい、猛追を受け、囚われの身になってしまう。煉獄部屋。そう呼ばれる場所に落とされた翔平は、度し難いまでの拷問を、苦痛を一身に味わうことになる。ちくしょう、おっかねえ、吐き気がするほどのピンチである。頼みの綱である隊長も神経毒にやられ、捕まえられてしまった。こうした窮地において、翔平のおどろくべき成長が描かれているわけだが。成長。成長と、今しがた述べた。たしかにいったんは危機から脱し、ふたたび合流した翔平の、傷つきながらも逞しい姿に、カエは〈昔はあんなにヘタレ男だったのに 見違えたわ‥‥〉と思う。しかし、ふつう、成長という語を用いるとき、無条件にポジティヴなものを想定してしまいがちであるのに、翔平のそれには、どこか、悲壮なニュアンスが引っくるめられている。じっさい、彼を動かしているのはすでに、希望というよりも狂気であるかのようにさえ、感じられる。あきらかに、いくつかの描写は、そうした傾きを持っている。いや、何もそれは翔平にかぎったことではないのかもしれない。敵方のみならず、味方も含め、登場人物たちの表情、とくに白眼と黒眼のバランスのぎらぎらとしているところには、このマンガが基本的にホラーのテイストであらわされている以上の、すごみ、がある。おそらくは、善悪の判断が主観の内に呑み込まれてゆく、主観のありようが善悪の基準を覆うぐらいに肥大化しているので、そうなっている。もちろんその、イメージの出方自体がホラーの表現に由来するものだといえばいえる。だが、そこにとどまらず、さらに先へ先へと突き抜ける気配を、『ゆうやみ特攻隊』は孕む。いつもどおり、この作者が忍び込ませるギャグのセンスはおかしい、愉快であり、翔平や隊長の佇まいがハイパー・シリアスになっていくなか、カエが一定のユニークさをキープしていることが、かえってすばらしい。そう、振り返るなら『ゆうやみ特攻隊』とは、翔平、隊長、カエ、それから2号を加えてもいいよね、の三人と一匹を主要とし、はじめられた物語であった。心霊探偵部で得られたコミュニケーションこそが、姉を失って孤独な運命を抱えた翔平の、心の成長を代替していたのである。黒首島の決戦が佳境に入れば入るだけ、事態は深刻に、救いがたさは増すに違いない。しかし一人きりではない、絶対にないことがきっと、彼らの魂を助けるだろう。

 3巻について→こちら
 2巻について→こちら
 1巻について→こちら

・その他押切蓮介に関する文章
 『ミスミソウ』
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『プピポー!』
  1巻について→こちら
 『おばけのおやつ』について→こちら
 『ドヒー! おばけが僕をペンペン殴る!』について→こちら
 『マサシ!! うしろだ!!』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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