ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年03月31日
 蒼太の包丁 20 (マンサンコミックス) (マンサンコミックス)

 細かい部分はさておき、料理マンガと大きく括るのであれば、数的に見ても他の題材に決して劣らぬこのジャンルの、とくに物語のレベルにおいて、『蒼太の包丁』は、いま現在、もっとも正統派の作品であるし、すぐれて上質な部類に入るとさえいえる。北海道から上京してきた青年が、形式と伝統の世界で揉まれ、自立を目指し、頼もしく成長してゆく、こうした本筋の魅力的なところは、20巻の長さになっても変わらず、さまざまなエピソードが次々に繰り広げられている。しかしまあ、嫌な奴は嫌な奴でどこの店にでもいるもんだな。蒼太たちが働く銀座の『富み久』から、赤坂の『なのは』へ移っていった須貝が見舞われる悪意に、思わず、そう呟きたくもなる。だが、ここで重要なのは、嫌な奴が誰でどうというより、災難に振り回された須貝が、それをバネとし、前向き、また一つ、歩みを進めることに、物語のテーマが託されている点である。主人公の蒼太と同じく、作中の時間は確実に、ワキの人物たちをも逞しくさせている。初期の頃の、あのだらしがなかった須貝は、もはや、いない。それは、以前と比べたときに彼の造形がぶれているということではなく、こうした表情を持てるまでに彼が育っているというしるしにほかならない。一方、蒼太のもとには、亡き父の弟弟子だという料理人、勝俣が訪れる。生前に〈俺に万一のことがあったら……たまにでもいい 東京で仕事をしている蒼太の様子を見てやってくれねぇか?〉と言付かっていた勝俣の目に、はたして蒼太の仕事は、どう映るか。一度は苦言を呈しながらも、十分に納得のいく答えを得られた勝俣は、まさしく蒼太の、父の魂とでも呼ぶべき包丁一式を手渡す。こうしたくだりは、たしかにウェルメイドのきらいがあるだろう。じっさい、話の内容そのものはあまり深くなっていないので、作中人物と同じぐらいの感動を得られるかといえば、ノーである。主人公の成長自体の表現化にはなっていないためでもあるのだが、そのかわり、彼はいったいどこまで進んだか、一種のチェック・ポイントであるような確認が、物語のなかに明示されている。

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posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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