ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年03月31日
 とりあえずは、もうここで完結しても十分だろう、ゴールしてもいいよ、と感想を述べたいのであったが、いやいや、それは決して批判の意味ではない。じつのところ、たいへん恥ずかしながら、この『味いちもんめ〜独立編〜』の、2巻の内容には、これまでの無印『味いちもんめ』そして『新・味いちもんめ』とシリーズを通し、最大級のクライマックスが用意されており、読みつつ、涙させられてしまったのだった。おい、具体的にどのへんだよ、と尋ねられれば、もちろん、ついにオープンした伊橋の店に、かつての恩師である『藤村』の親父さんが訪れ、祝いの言葉をかける場面のことをいっている。そこはまちがいなく、シリーズ全体を一個の作品として捉まえたさい、重要な到達点であるような、つまり、これを描いてしまったらあとは何が残されるんだ、というぐらいのピークを担っている。だって、そうだろ。スタートの段階においては、つっぱった兄ちゃんでしかなかった主人公が、形式と伝統の世界で他人と交わり、経験を積むうち、いくつかの変節を経て、一人前の職人へと成長してゆく、こうした過程のすべてが、『藤村』の親父さんの〈いい店やないか。開店おめでとう〉という伊橋に向けた言葉、さらには従業員たちに対して〈いたらん所もあると思いますが、伊橋をよろしく頼みます〉と頭をさげる姿には、集約されているのである。以前のレギュラー陣、無印のボンさんやナベ、「新」の松下や早瀬の再登場も手伝い、作品史上、特筆すべきエピソードとなっている。すくなからぬ思い入れを持った読み手であれば、しばし泣けるであろう。『味いちもんめ』を、伊橋の物語として考えたとき、もはや、これ以上のドラマがありうるとは思われない。無印の当初は、伊橋の意識に明確であった親子間の確執と葛藤も、『藤村』の親父さんとのやりとりに肩代わりされ、報われていると見てしまってもいい。もう、これ、最終回でいいじゃん。とはいえ、深田と啓介の新メンバーを加え、いよいよ『楽庵』を開店させた伊橋の、見事な大将っぷりは、しょぼい自分探しで展開を引き延ばしていたふうな「新」の、あの後半のぐだぐださ加減を払拭して余りある充実を、ストーリーに提供している。ふつうにおもしろい。まだ人手の足りない『楽庵』に助として入っているナベや早瀬とのやりとりもたのしい。伊橋の野郎、すっかりカリスマじゃねえか。ほんとうはこのまま、山あり谷あり質のよいエピソードを量産していければ、まあ、問題はないのだが、いかんせん、「新」の前例があるだけに、シナリオの部分に不安が残る。

 1巻について→こちら

 『新・味いちもんめ』
  21巻について→こちら
  20巻について→こちら
  19巻について→こちら


posted by もりた | Comment(3) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
この記事へのコメント
うーん、連載で読んでるときはそこまで感動的ではなかったけどなあ>藤村のおやじさんの件
なか、話の流れの中で出てくる数あるエピソードのひとつというか。
単行本で読むと違うのか。あるいは、思い入れの差か。
Posted by オノジマ at 2009年04月01日 14:21
いや、あれは「新」でリセットされた昔の登場人物が、用意された場面のなかで満を持して出てくるところが、おお、と思わせるのではないかと。そういうサプライズ要素に、まんまとはまってしまったのかもしれませんが、あとはまあ年齢的に、自分と伊橋を重ね合わせて、というのもあるかもしれません。
Posted by もりた at 2009年04月01日 21:30
あははは。なるほどね。じゃあ森田君もはやく伊橋みたいにならないとね。
Posted by おのじま at 2009年04月02日 01:07
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