ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年02月21日
 なるほど、ヤクザもやっつけちゃえるほどの腕力があれば借金取りだって怖くない、というのは真理の一つである、かな。俵家宗弖一が原作をつとめ、柳内大樹がマンガを描いている『ドリームキングR』に関しては、これまで、どうもちょっとね、いまいち腑に落ちないところも多かったのだけれど、この4巻は、いやいや、たいへん物語に入っていきやすかった。それはおそらく、作品を占めるおおきな要素のうち、自分探し的なモラトリアムの迂回路めぐりが一歩後ろに引き、国盗り合戦的な軍記物のわかりやすさが前に出ているためだと思う。服飾、ファッションの業界を舞台とする『ドリームキングR』であるが、そこでの成功とはつまり、軍記物の様式であらわされているといって良い。競合は許されず、ブランドや店舗は、他のブランドや店舗を食い、支配していかないと、生き残れないのである。もちろん、企業系のフィクションも同様の論理で動いているものがすくなくはない。しかしこのマンガの場合、なぜか、ケンカなどによる武力決着が果たされなければ、優劣ははっきりしないとの点において、ヤンキー・マンガのヴァリエーションに等しくなっている。しかして、そこにモラトリアムを支援するヴァーチャルな自意識を組み込んでいるのは、同じ柳内の『ギャングキング』のごとく、だけれども、『ギャングキング』がそうであるように、作者の筆力は、感情の複雑なさまを緻密化するのに向いていない、むしろ抽象的なイメージのとおり戯画化するのにすぐれているのであって、それがすなわち、自分探し的なモラトリアムの迂回路めぐりを下げ、国盗り合戦的な軍記物のわかりやすさを押すことにより、うまく作用しているのが、『ドリームキングR』の、4巻の内容だといえる。主人公であるジョニーの、深く考えることもなしに、まず行動を先に起こしてゆくことの結果が、関わった人びとを悪政から解放させる。客観的な事実はともかく、主観の判断で敵と見なされるべきは、ぶん殴って倒しちゃえばいい。そしたら勝ったことになるだろう。失敗するはずがない。これはこれで当然、子供のモチベーションにほかならない。だが、ここで重要なのは、『ドリームキングR』の概要自体が、子供が子供のままビジネスの世界でサクセスする姿に支えられていることである。言い換えるならば、子供抜きでは成り立たない世界なのだ。子供らしさは、ジョニーの頭の悪さがイノセンスとイコールであることによって保証されており、その正当性を拳のつよさが補う。正直、こうした構造に関する非難はあるにしても、とりあえずおいておきたいのは、一塊の純粋さが、汚い大人をくじく、汚れつつあった同志を導き直す、といった展開の単純さに、やはり、胸のすくものがあるからで、飛び降りた先にたまたま相撲取りの集団がいたので命が助かったっていう、馬鹿馬鹿しさは好きだよ。数々の困難をまとめてクリアーし、『ゴッサマー』を譲り受け、『SHIBUYA』の顔役を任されるようにまでなった当のジョニーが、こうした成り行きを〈もう展開が急すぎて何がなんだか………〉と漏らしているけれど、ライヴァルであったオザキックやJが配下に加わる部分も含め、武勲の示し方としてはひじょうに明解である。

 3巻について→こちら
 1巻について→こちら

 『ドリームキング』
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら

・その他柳内大樹に関する文章
 「バンカラボーイズ」について→こちら
 『ギャングキング』
  14巻について→こちら
  13巻について→こちら
  12巻について→こちら
  10巻について→こちら
  9巻について→こちら
  8巻について→こちら
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
 「オヤジガリガリ」について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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