ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年01月26日
 ああもう、切なすぎて、胸が潰れそう。藤原よしこの『恋したがりのブルー』に示されているのは、男女四人のスモール・サークル内における恋愛模様でしかなく、それがこの4巻に入っても決して開けてゆくということはないのだが、しかし、溜め息がいくつも漏れるほど、やわらかく透き通って今にも壊れそうな、情景が広がる。ウソからはじまったはずの恋が、いつの間にか、本心になってしまっていた蒼であったけれど、陸と清乃とがじつは昔から好き合っていたことを思えば、それがどれだけ辛くとも、身を引くよりほかなかった。一方、清乃と付き合い出した陸も、蒼のことが思い出されては、悔やみたい気持ちでいっぱいになる。だが、いったん先に進んでしまった時間の針はもう元に戻ることがない。清乃のかつての恋人であり、陸の親友でもある海から、意外な告白を受けた蒼は、そのやさしさに触れて、だんだんと陸を忘れようとする。ほんとうに、それ以上のことは、何も起こらないのである。事故や難病で誰かが死んだりもしない。にもかかわらず、ありありとした感動が、マンガのうちに存在している。なぜだろう。たとえば嫉妬がそうであるように、想いがつよく深ければそのぶんだけ、せこいこと、しょぼいことにも、感情が、おおきく揺さぶられてしまう場合がある。たかだかその程度のことさえ、コントロールしきれない部分に、あるいは人間らしさを見つけられたりもする。こうした、他愛もないモーメントのうちに隠される生々しい表情を一個の手がかりとし、作品は、自分にすら正直になれない人々の苦しさを、見事に描き出しているためである。四人がそれぞれ、複雑な思惑を抱き、立ち会い、二手に分かれる場面の〈ただ いっしょうけんめい好きな人がいるだけなのに あたしたちの 心は いつも 泣いていた〉というモノローグが、抜けないトゲの痛みを寄越す。

 1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック