ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年01月11日
 畑亜希美『ベイビー☆キスをどうぞ』の1巻は、同作者の『ベイビー☆お手をどうぞ』の続編であって、相変わらず、欲情した初心なヒロインが、自ら進んで意地悪なイケメンさんにやられちゃう、やられそうになっちゃう(下品な言い方をすればね)的な、少女マンガのジャンルにおいては程度が低いと見なされがちなヴァリエーションを、ちょっと脱線、脱臼していくようなところが、愉快で、たのしい。ネイリストとしての才能を秘めながら、作業中の表情がおっかなく、接客に向いていないため、雑用に回されがちな児玉そのみは、話の成り行きから、なぜか、サロンの若きオーナーであり、やり手であるぶん、トゲのあるタイプの阿倍心二と付き合うことになってしまい、慕っては、突き放される。その、でこぼこなカップルに、そのみの腕前に目をつけたヘアメイクのカリスマ、石川圭吾がからんでくる、というのが、ここでの展開であって、三角関係ふうのトラブルが、『ベイビー☆お手をどうぞ』ではあまりなかった心二の嫉妬を、煽る。と、まあ、こうした説明では、ストーリーを伝えるだけで、正直、作品の魅力をあまり示せていない。たぶん、全体の三分の一から半分ぐらいの容量で盛り込まれたコメディの要素が、そのみの、どじぶりと純粋さの両方が表であるような面を強調しているあたりに、にやにや、おかしくさせられるものがあるのだと思う。とくにすばらしいのは、やはり、ヒモパンのネタであろう。恋人同士とはいえ、そのみが恋愛経験に乏しく、心二のほうは素直な性格ではないので、なかなかそれらしい雰囲気にはならない。こうした状況を打破しようと、そのみは、男性経験の豊かなモデルの姉二人に影響され、やや間違った方向に奮起、がんばる。その、要するに、誘惑の手段の一つ、アイテムがヒモパンである。大事に大事にアイロンがけまでしているヒモパンである。種類もたくさんに取り揃えたヒモパンである。いざというときのため、つねにしまって持ち歩いているヒモパンである。しかしながら、今まで使われたことのないヒモパンである。いや、むしろ、いちいちアピールされるたび、心二が引いてしまっているヒモパンである。これはもちろん、ギャグになっている。が、同時に、いまだセックス(性交)へといたっていない、つまり不確かなまま停滞している間柄にそのみが抱いている揺らぎを、ばかばかしくも神妙に、代弁している。もしかしたらある種のメタファーと喩えてよいのかもしれない、いやいや。そのみは、心二のことを、オーナーと呼ぶ、呼び続ける。それがいつの日か、よりいっそうの親密さを得て、べつの呼び方に変わるまで、おそらく、ヒモパンが使われることはないだろう。こう書いておいて何だが、ヒモパンって。

 『ベイビー☆お手をどうぞ』について→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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