ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年12月23日
 この2巻から、安西信行の単独名義となった『MIXIM☆11』だけれども、巻末にはちゃんと野坂恒の名前も作画にクレジットされていて、まあ、このへんはいろいろと事情があるんだろうね、と思うしかないし、もしかしたらアクセル・ローズがガンズの名前に固執するのと等しく、ある種、作家性の発露であるのかもしれない、と考えられたりもするが、いずれにせよ、個人的にもっとも安西信行というマンガ家に望んでいるものが、『MIXIM☆11』にはよく描かれている、この意味において、とくに差し障りの出るような変更点がないのは喜ばしい、今のところ。

 安西の過去作である『ロケット・プリンセス』や『烈火の炎』のなかでも魅力的だったのは、やはり、学園をベースとしながらどたばた転げ回る部分である。そこには、日常生活とファンタジーの境で、男の子が女の子のためにがんばる、あるいは逆に女の子が男の子のためにがんばる、といった古典的なラブコメのモチベーションが、生き生きとしてあらわされていた。やりようによっては『MAR』もそういうふうにつくることが可能であっただろう。だが、ファンタジーの世界で繰り広げられるバトルに邁進する一方、学園という場所、空間は、帰るべき平穏な日常を象徴する以上のものにはならなかった。できればの話、『ヤングキング』誌に発表された「CRAZY MANIAX」みたいなマンガを、読み切りではなく、やって欲しかった。

 そうした、こちらの願いに近しい印象が、『MIXIM☆11』には、かなり、おおきく、ある。つまり、学園という器に、ささやかな日常と大胆なファンタジーの混在になった賑やかさが、溢れている。付け加えるなら、世間の評価がどうであれ、だ。

 自分たちが、北極星の王子候補であることを告げられた壱松と竹蔵、小梅の三人は、12星座の刻印をそれぞれ一人に一つずつ持つ少女たちを探す使命を負いながら、もてない高校生活に一喜一憂する日々を送っていた。しかし、そのような安寧を脅かす存在が、すぐそこにまで迫っている。危機の到来に備え、北極星の使者カルミナは、壱松らに特殊な能力(星の加護)を与えんとする、ちょうど同じ頃、壱松の幼馴染みである弓が、謎めいた転校生たちの手に囚われてしまうのであった。というのが、ここでのくだりであって、やがて繰り広げられる超常的なバトルの展開がどうというよりも、むしろそこへ至る過程のなか、モチベーションのなかに、ホットさがある。

 ホットさは、友情や愛情、とにかく誰かを大事にする気持ちに由来している。たとえば、兄貴分である勝っちゃん(勝巳)が、転校生の一人にやっつけられ、病院に入れられてしまったのを見、壱松が、表向きは静かに、しかし内面はかっとなって、怒りを行動に移すあたり、これは男同士の繋がりを、意趣返しを用い、表現しようとするさいの、典型的な作法に違いない。だがそれが起爆剤となり、順繰り順繰りテンションのあがっていく展開、いやより正確を期すなら、それを起爆剤とするための手はずまでをも含め、場面ごとに、だんだんとテンションを加えていくプロットのあり方は、正統であるがゆえの強度を有している。

 かっこういいとはどういうことか。深く考えるうち、素直に示せなくなってしまう作家もしばしば、いる。しかしながら、ここで目にすることのできるエピソードは、かっこういいとはこういうことだ、とでもいうような断言を、素直なぐらい、登場人物の一挙手一投足に託すことで、ひじょうに明確な、すなわちわかりやすく、熱を浮かび上がらせ、実感させる。

 今後に強敵があらわれても戦うことを決意した主人公たちから、彼らの秘密を明かされた勝っちゃんは〈死ぬかもしれない!! それでも誰もお前らに「ありがとう」なんて言わねーぜ!?〉と言う。これに対し、壱松、竹蔵、小梅の三人が〈別にいいよ。損得で決めた事じゃねえんだ〉と断固たる姿を見せるのが勇ましい。そしてその姿は、苛酷な運命に巻き込まれてしまった12星座の刻印を持つ女の子たちを守るためにがんばるという、回りくどさのいっさいないおかげで、まっすぐ、溌剌としたモチベーションに支えられているのである。

 1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
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