ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年12月29日
 Astral Project 月の光 1巻 Astral Project 月の光 2巻

 僕のなかでは、なんとなく中上健次と狩撫麻礼ってダブるんだよなあ、などと思いつつ。江口寿史の『正直日記』を読んでいると、狩撫麻礼の無骨さと日本の若いマンガ家の体質はもはや完全に相容れないのではないか、という気もしてくるのだが、いや、しかし77年生まれの竹谷州史が見事に受けて立ったのが、この『Astral Project 月の光』である。すなわち原作者のmarginalとは狩撫麻礼の別名なのだった。保守反動的な父親に逆らい、北海道の家を出た木暮柾彦は、東京で、高級娼婦の送迎をして生計を立てている。謎の死を遂げた姉麻美の遺品であるCDからアルバート・アイラーのサックスが、その未発表テイクが流れるとき、彼の意思は体外に離脱する。〈俺は・・・自分の肉体を見下ろしていた!〉。やがて同じように東京上空を幽体で舞う人々と出会う。だが、なぜ麻美は死ななければならなかったのか、それを知ろうとする柾彦の脳内に、アストラル・プロジェクトという語感が、響いた。スピリチュアルな部分はもともと狩撫の持ち味とはいえ、過分にファンタジックでオカルティックな要素が盛り込まれ、謎解きふうのつくりが施されているけれども、印象としては『天使派リョウ』あたりに近しい、俗世間からドロップアウトした人々が、各々自分の生き方を選び直していくような、そういう内容のように思える。しかしアウトサイダーなどといえば、80年代の『ボーダー』、90年代の『天使派リョウ』、そして本作と並べてみると、ここでのトーンは深刻かつナイーヴでありすぎるほどに重たいことに気づく。それはもちろん作画側の資質の問題もあるのだろうが、そのことも含め、時代性を反映している感じがする。もうすこしいえば、社会環境ないしシステムそれ自体を安直に敵対視できない状況が、登場人物たちに暗い表情と閉塞感を与えているのではないだろうか。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ。
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