ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年12月26日
 夜刀の神つかい 9 (9)

 たぶん人はひとりでは生きてはいけないということはなくて、もしかするとひとりでも生きていけるのかもしれない、けれど、ひとりで生きるのはしんどい、そのしんどさを内面の一部だとして感知するのではなくて、そもそものはじめから信じないか、まっさらに消去してしまえば、要するに、エンプティだ、その瞳は暗くパセティックに光るのだろう。かつての日向夕介は、そのような状態にあった。アパシーに浸された肢体は、人を殺すことに躊躇いを持たず、超高度に躍動するが、充足はなく、すべては無味乾燥のうちにあった。しかし、ひとりの女性が、彼を変える。菊璃との出会いである。〈バスタブに沈む菊璃の柔らかな裸体を抱き上げたとき オレは初めて肉と骨の持つ重量を知り それが命の重量だと知った そしてオレは初めてオレの生まれて来た理由を知ったような気がしたんだ〉。しかし蜜月は“夜刀の神”砌(みぎり)の復活によって破られ、夕介は、はじめて絶望と孤独と敗北を知る。そして、ついに9巻、砌の下僕に堕ちた菊璃との壮絶な再会劇が展開されるのであった。ストーリーの進行自体はスローではないのだけれども、いかんせん単行本の出るスパンが空きまくりなので、なかなか物語に集中できない部分もあるが、ようやく佳境に入ってきたというところで、ぐっと戦況が盛り上がってきている。ただし、やはり全体のテーマみたいなものが総括しにくいため、ドラマは、薄いヴェールの向こう側で語られている印象である、各登場人物の末路が、その背景とうまく繋がっていない感じもする。感情移入のとり方に、やや難があるのだ。絶対に大団円はありえない内容であるので、その悲劇性をどのように煽っていくかが、今後の要点であると思えば、そのへんは、一抹の不安ではある。とはいえ、僕のなかではまだまだ、ぜんぜんおもしろいマンガのひとつに違いなく、夕介とヒカゲのもはやありえない友情の、その儚い残像がうつくしいことに、ポエジーだなあ、と胸の痛みを覚えたりもするのであった。

 8巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | マンガ。
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夜刀の神つかい(9)
Excerpt: ★★★★☆ 著者:奥瀬サキ・志水アキ 出版社:幻冬社 前園は負傷しながらも、浅野博士の元から逃げ切る。 一方、夕介は菊璃との再会の時を迎えようとしていた…。 (amazon.co.jpより??..
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Tracked: 2005-12-29 23:54