ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年11月22日
 話のスケールをおおきくしていくにあたり、則夫の犠牲も仕方がなかったということか。関東一円会会長選が迫るなか、アキラとドクター大内の暗殺されかけたことが、波紋を呼び、彼らばかりではなく、大介や守、そして加瀬までもが、各組で次世代として台頭してくるきっかけとなる。ここからが、裏切り、裏切られ、血で血をぬぐうシリーズの本領発揮か、と、立原あゆみの『仁義S(じんぎたち)』8巻は予感させる。なにせ、どれだけ重要な役を負っていようが、ちょっとでもヘマをしたら、容赦なく切り捨てられてしまうのが、前作『JINGI』からの伝統であり、醍醐味だからね。それにしても『JINGI』との繋がりでいうなら、大内の命が危ういところだったと知り、仁が柳澤と事を構えようとしていたと、アキラに伝える義郎の言葉が見逃せない。アキラが〈か 会長が……そんな事まで…〉と驚くのに向かい、義郎は〈おめえらは やつにとって 大切な仁義 JINGISだ!〉と言うのである。これはもちろん、作品のタイトルにシメされた意味をアピールするかのような、そういう重みの加えられた箇所にほかならない。しかし、それ以上に注意しておきたいのは、あくまでも義郎が、仁にとってアキラたち新世代は大切な後継だと考えられている、と述べている点だろう。単純に、場面的な言葉のアヤなのかもしれないが、しかし、なぜ義郎がヤクザになったかを振り返ったさい、これは意外とおおきな含みを持つ。なぜ義郎はヤクザになったのか。まあ、これまでにも再三述べてきたので、繰り返さないけれども、先ほどの言葉は、はたして義郎のなかに「仁義」があるのか、あったのかどうか、を読み手にあらためて疑わせる。そもそも天才肌の義郎は、すべてのあらましを、ひっそり、まるでゲームのマスターのごとく、仕切ってきた。その彼にしてみれば、「仁義」というそれも、盤上の展開を左右する一要素にすぎないのでないか。こういう穿った見方をさせられることが、物語のミス・リードを誘う。どれだけ重要な役を負っていようが容赦なく切り捨てられてしまう、それがこのシリーズの醍醐味と、すでに書いた。が、おいおい、まさか、ここで甲田がリタイアしてしまう。仁とともに、前世代の、「仁義」を貫いた人物である。作外の読み手にも、作中人物にも、好感度は高い。はたして誰が彼を殺したのか。ふつうのマンガであれば、仁と義郎に敵対する側の仕業と、すぐに決めつけられる。だがそれすらも、義郎の、のちのちの展開を踏まえた戦略、攪乱という可能性が捨てきれない。甲田の訃報を聞きつけた、関東一円会のトップたちが、まさしく呉越同舟のかたちで一同に介し、牽制し合う。そこで仁と義郎は、こうアイコンタクトする。〈今夜の集まりの中にいる 仁〉〈ああ…オレかもしれねえ 義郎おめえかも〉。甲田の死を起爆剤に、いよいよ戦争がはじまる。

  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら 
  3巻について→こちら
 
・その他立原あゆみに関する文章
 『極道の食卓』
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『恋愛』
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『本気![文庫版]』
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  1・2巻について→こちら
 『ポリ公』
  4巻について→こちら
  2巻について→こちら
 『月の教室』について→こちら
 『喰人』1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック