ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年11月16日
 中途、退屈な展開もあるにはあったものの、しかし高校三年間の限られた時間がとてもきれいに切り取られていたな、という感想が、酒井まゆの『ロッキン★ヘブン』もラストにあたるこの8巻を読み終えたときに、思い浮かぶ。それはきっと、たぶん、卒業式で描かれる風景が、うつくしく、これまでの物語を締めくくっているからだろう。いや、むしろその効果によるところが、圧倒的に、おおきい。正直、快活なヒロインである紗和とひねた坊ちゃんの藍をめぐるラヴ・ストーリーとして見た場合、迂回路も迂回路で、わざわざ、といった感じがしなくもなく、やや一本調子になってしまったが、周囲の人間たちの彩り鮮やかな表情が、学校を去っていくその後ろ姿のなかにも求められ、とても幸福な余韻を与えている。特徴的であったのは、レギュラーに噛ませ犬を一人加えたほかには、当初の時点でできあがっていたスモール・サークルをそれ以上はひろげず、その内部で終始するよう、人間関係が結ばれていたことである。閉じているといえばそうなのだけれども、だからこそ教室を去るさいの〈振り返って 眺めれば なんて狭い楽園 でも ここは 私たちにとって天国みたいな場所だった〉というモノローグが生きてくる。ある時期にしか存在しえない輝きが、まるで両の手のひらでやさしく包み込まれるみたいな、そういう綴じられ方をしているおかげで、純粋な光を拡散しないままに済んでいる。ほんのすこし、卒業後の様子が垣間見られる最後の数ページに関しては、読み返すたびに、もしかするとこれは余計だったのではないか、いや、これはこれで必要なのではないか、と、いまだに結論が出せない。未来から過去を振り返る視点により、幸福な印象が高められているが、なぜそう感じられるかといえば、結局、彼らが何かを失うこともなしに大人になれた様子が示されているからなのだ。もちろん、それはたいへんすばらしいことである。だが、やはり心のどこかで引っかかってしまう。とはいえ、彼らのその後をうまく流用した番外編は無条件でたのしく、こういうかたちであれば、とくに問題とはなってこないあたり、本編の最後で個人的に覚えられる違和感は、今日における少女マンガ自体が持っている構造のほうと、ふかく関わっているのかもしれない。

 7巻について→こちら 
 6巻について→こちら
 4巻について→こちら
 3巻について→こちら
 2巻について→こちら
 1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
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