ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年11月13日
 自分ではきわめてヤンキー・マンガに好意的な読み手のつもりであるけれど、それでもこのマンガ版『ドロップ』の良さはよくわからない。売れている(らしい)からには、それなりの長所があるには違いない。しかしそれがうまく掴めないのである。いや、むしろどこが短所なのかも見つけづらい。なぜだろう、と思う。たとえば、やはり高橋ヒロシが名前を貸している(だけの)永田晃一の『Hey!リキ』であるならば、単純に下手くその一言で片づけられる(きつい言い方でごめんね)。だが『ドロップ』の場合、鈴木大(鈴木ダイ)の描くアクションは、そもそもSF的なバトルを得意としていただけあって、決めるべきところはかっこうよく決めている。ならば、ストーリーの部分に難があるのかといえば、そうかもしれぬ。もはや小説版とは趣の異なる展開になっているので、できうるかぎりべつもの、あくまでも品川ヒロシ(品川祐)の自伝的なフィクションに基づいたコミカライズとして見ておきたいのだが、やはり、中学生が主人公だという点に問題がある。暴走族との大規模な抗争など、これだけ派手なことをやらかすのであれば、原作者の自伝であるような要素は後退させてでも、年齢を引き上げるべきではなかったか。あるいは15歳(だよね)という年齢が重要な意味を持つというのなら、それを際立たせるもう一工夫が欲しい。読み手はせいぜい、作中人物たちのプロフィールを見、ああ、これ、中学生のお話だったのか、と気づくぐらいで、極端にいえば、無力であるがゆえに悩まなければならない思春期の像がうまく出せていない。おそらくその部分は、本質的にはふつうの中学生でありながら、ヤンキー・マンガの主人公をヒーローとして見、憧れ、不良になろうとする信濃川ヒロシが担っているのだろうけれど、結局、彼のフラストレーションも、開放感や全能感によって、簡単に上書きされてしまう。この5巻の巻末には鈴木と品川と高橋による対談(初出は『月刊少年チャンピオン』07年4月号)が掲載されている。そこでの鈴木と品川の言葉を信じるのであれば、『クローズ』や『WORST』とは違い、等身大の物語が目指されていることになっている。だとしたら、まったくのフィクションである某作品の「冬の15歳」たちに比べても、生々しさと切実さが足りないと感じられるのはまずくないか。だいぶストーリーが進んできた現在もなお、スペクタクルとテーマとが、安定しない足場のうえで、綱引きし合い、あちこち散漫になっている印象である。

 1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
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