ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年09月15日
 パピヨン 5―花と蝶 (5) (講談社コミックスフレンド B)

 簡易心理学的なファクターを導入し、内気なヒロインの変身願望といおうか自己実現といおうか、とにかくコンプレックスからの脱却を、上田美和の『パピヨン―花と蝶―』は描いていたのであったが、そのヒロインである亜蝶(あげは)とカウンセラー見習いの九(いちぢく)の間柄が両想い化したのにともない、亜蝶の双子の妹、花奈(はな)の存在感をアップさせて、姉妹の確執がちょうど三角関係上に成り立つような、わりとオーソドックスな方向へとストーリーを展開してゆく。もちろん、双子という設定を生かした入れ替わりトリック(?)もふんだんに活用されている。この5巻では、かつて花奈の恋人であった新堂が登場してくるのだが、彼の語る真実は、なかなかに興味深い。先ほど冗談半分で入れ替わりトリック(?)といったけれども、じつは姉妹が入れ換え不可能だからこそ、中学のときに新堂は、亜蝶のほうに心惹かれ、花奈とはうまくいかなかったのである。そしてそのことが花奈にトラウマ状のダメージを負わせている。そもそも亜蝶は自分が花奈みたいにはなれないことをネガティヴに捉まえているのに対して、花奈は自分が亜蝶と入れ換え可能な存在であるかもしれないことをネガティヴに考えている。むしろ両者の根本的な差異はそこにあるとすらいえる。たとえ第三者にとって、二人が入れ換え不可能であったとしても、恋人が自分以外の、さらにいえば自分によく似た相手に感情を動かされ、そちらを選んだとしたならば、必然的に蹴られたほうは一時の代わりでしかなかった、と自己評価をさげてしまう。これが花奈の気持ちであろう。逆に亜蝶は、あらかじめの自己評価が低いため、そのような境地とは無縁にいる。自分が誰かを差し置いて選ばれるとは思いもしない。結果、寄せられた好意をからかいだとしてしまう。真剣に問わず逃げ出してしまう。亜蝶が新堂と再会したことを隠しているのを知り、花奈が〈あんたって自分の気持ちばっか敏感で 人に無神経すぎ あんたのそういうとこ大っきらい!!〉と当たるのは、過去に受けた惨めさを、与えた側がまったく理解していないからで、この苛立ちが解消されないかぎり、姉妹に和解が訪れることはない。むろん、それは各人が単独でのぞまなければならない問題であると同時に、両者の歩み寄りを必要としなければならない問題でもある。

 2巻について→こちら
 1巻について→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
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