ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年09月08日
 ゆうやみ特攻隊 3 (3) (シリウスコミックス)

 黒首島を悪霊の恐怖によって支配する鉄(くろがね)一族に囚われた翔平は、死ぬよりも辛い拷問を味わうか、せめて人間らしく自死するか、究極の選択を迫られる。もはや逃れることはできないのか。諦めるしかないのか。圧倒的な無力感が苛む。そのとき、霊感犬2号の吠える声が聞こえた。隊長つええ。そしてかっこういい。押切蓮介の『ゆうやみ特攻隊』3巻の感想は、とにかくそれに尽きるのであって、やばいぐらいに危機的な状況すらも隊長ならば何とかしてくれる、という気にさせられる。一方、隊長の存在に感化させられ、ゆるやかにだが、たくましく成長しつつある翔平の姿を描くことも忘れられていない。そうした成長への期待が、隊長の〈漢(おとこ)を見せなさい‥‥!!〉という言葉に示されている。漢を見せる、つまり自覚的に成長を遂げるためには、これまでだったら臆してしまったようなピンチにも、敢然として立ち向かわなければならない。窮地を隊長に助けられた翔平が今度は、隊長の不在時に追っ手と対決する場面は重要なモーメントである。真っ向から戦っても勝てるわけがない相手に、罠をしかけたかえでは翔平に〈辻君は何とか敵をおびき出して 可能ならその際 敵を打ち負かせれば理想的!〉と半ば冗談めかして言うのだが、隊長の言葉を思い出し、ふんばることで結果的に、その〈可能なら〉ば〈理想的〉な事態を叶えてしまう。凡庸なマンガであれば、漢(おとこ)という語の単純化を用いればたちまち、綿密なプロセスをすっ飛ばしてしまうところを、このマンガの場合、語彙自体よりプロセスのほうに重みが置かれており、アクション・シーンの派手さはあくまでも副次的なものにあたる。そしてそれはおそらく、鉄一族との直接対決に進んでいく次巻以降、さらに明示的になっていくことだろう。それにしても、翔平やかえでたちに襲いかかってくる井戸端会議のおばちゃん三人組の造形なのだけれど、これって基本的には『でろでろ』のお化けなんかといっしょなんだよね。鬱陶しいものが、いっけんギャグでしかない。いやまあ、じっさいにギャグでしかないのかもしれない。だが、同じ三人組を使ってギャグをやっている巻末のおまけマンガと比べると、だいぶインプレッションが違う。いや、そのようなインプレッションの操作にこそ、じつはこの作者の真髄が見られる。

 2巻について→こちら
 1巻について→こちら

・その他押切蓮介に関する文章
 『ミスミソウ』
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『プピポー!』
  1巻について→こちら
 『おばけのおやつ』について→こちら
 『ドヒー! おばけが僕をペンペン殴る!』について→こちら
 『マサシ!! うしろだ!!』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | マンガ(08年)
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