ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年08月27日
 幸田もも子の「姐さんカウントダウン!」は、ごく普通の女子高生がヤクザのぼんぼんに見初められるという突飛なシチュエーションを出発点にしているけれども、基本的には、初心なカップルの、性交渉抜きの、ピュアラブルなラヴ・ストーリーであって、その続編であるようなエピソードを三個(いや、四個か)収めた『姐さんカウントダウン!〜恋愛抗争編〜』もまた同様の趣旨に貫かれている。親が借金をこしらえたせいで、猿和田組の跡取りで同級生の正宗と婚約する羽目になってしまった梅北律子は、最初は嫌々ではあったものの、以前には知れなかった彼の表情を目の当たりにするうち、いつかは結ばれることを認めるぐらいには心変わりをしはじめるのだが、そうした、いつか、はもちろん、もうすでに、を意味するのではなく、まだこれから、を意味するものである。つまり、律子の正宗に対する心の距離が近くも遠くもなっていく余地があること、律子の心の移動がますます行われる可能性のあることが、作品の肝要だといえる。何かしらのドラマをつくるため、距離や移動のあいだに必要とされてくるのは、おそらく障害だろう。これは『姐さんカウントダウン!〜恋愛抗争編〜』において、正宗の従妹であるミヤビの意地悪や、極道関係のしきたりであったりする。その障害を次々踏むことで、律子は正宗への想いをじょじょにつよめる、マンガの題名どおり、ヤクザの姐さんになるまでのカウントダウンを進めるのであった。もう一つ注目しておきたいのは、他の登場人物たちがめいめい親しげに下の名前で正宗を呼んでいるのに比べ、律子のそれは「猿和田くん」にとどまってる点である。これはちょうど、二人の関係が、まだこれから、発展する途上にあることの表現になっている。アルコや高野苺、山口いづみなどに通じる作風は今どき個性的とは言い難いし、技術的な問題として絵や話の運びに粗を見つけるのは容易いが、押さえるべきところをきっちり押さえた内容には、良くも悪くもの安心感がある。

 『姐さんカウントダウン!』について→こちら
 『誰がスッピン見せるかよ』について→こちら
 『そんでむらさきどーなった?』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
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