ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年08月23日
 個人的には、初期の頃のハード・ポップなミクスチャー路線を高く買っていただけに、ウェルメイドなアイドル・ポップスに移行してからのシングルには、あまり、ぴんとくることがなかったのだけれども、前々作の『Step and Go』の後半、メロディアスな楽曲のなかへ、なめらかにスムーズに挿入される櫻井くんのラップには、ひさびさ、おお、と目を瞠らされるものがあった。

 以前にも述べたとおり、99年に鳴り物入りでデビューし、今や国民クラスの知名度に達したARASHI(嵐)というグループこそが、もっとも00(ゼロ)年代を代表するに相応しい。初期のシングルによってアピールされていたのは、つまり、90年代もしくは20世紀で終わりが訪れることのなかった世界をライディングしていくための勢いであったのだろう。しかるに05年あるいは06年よりこちらの、不特定多数を射程に入れたシングル群にあらわされていたのは、満を持して次のディケイドを迎え入れるための成熟にほかならない。しかし、率直に言わせてもらえば、決して歌唱力に余裕のあるアーティストではないので、今ひとつ、こう、パンチとフックに欠けていた感は否めず。だが、それを補うようなインパクトが、『Step and Go』の、あの櫻井くんのラップにはあったのである。いや、正確を期すなら『We can make it』を経て、『Step and Go』に至り、彼のスタイルはさらにあざやかな印象を増した。

 たしかに初期の頃より、櫻井くんのラップは、ARASHIにとってトレード・マークの一つではあった。とはいえ、前向きなフレーズとリラックスしたトーンでの押韻とがしごくナチュラルに均されたと実感されるのは、すくなくともシングル単位で見た場合、『Step and Go』においてではなかったか。そうした路線を引き継いだのが、ダブルA面のニュー・シングル『truth / 風の向こうへ』のうち、「風の向こうへ」のほうである。

 出だし、アコースティック・ギターのカッティングが最高に効いているナンバーだが、いささか装飾過多なドラムとホーンのアレンジが、ちょっとね、であって、コーラスもわかりやすいメッセージをいかにもわかりやすいメロディで伝えてくれてはいるのだけれども、やはりメンバーの歌声に強力なものがなく、次第に凡庸さが覆い尽くす。だが、しかし、ふたたびアコースティック・ギターの音色がよく聴こえるよう、バックの演奏が鳴りを潜め、タイトルどおり「風の向こうへ」としばらく合唱されるなかに、櫻井くんのラップが飛び込んでくると、ブリリアントでしがらみを抜けた魅力を楽曲は持つ。〈光と影その向こうへ / 闇を照らす君の声〉というメロディのライン自体に特筆すべき点はないのに、それが〈行こう 向こうへ / 頂上の方へ 想いを掲げ〉と加算される櫻井くんのラップによって、十分な快活と解放を得、ひじょうにフレッシュな響きを、どこまでも遠くへ届きそうなぐらいに放つのである。

 ところで「truth」のほうは、櫻井くんのラップ抜きのナンバーであるが、いや、じつはそちらもなかなかに興味深く、ストリングスとピアノの前面に出されているところは、たいへんドラマティックである一方、バックのトラックはダンサブルな打ち込みのリピートに次ぐリピートで、そうした相互の作用が、ロバート・マイルズの「Children」にも似たインストゥルメンタルのカタルシスに繋がっている。通常盤に収録されている「スマイル」は、まあ、ここ最近のARASHIらしいナンバーで、可もなく不可もなく。

 『Dream“A”live』について→こちら
 『One』について→こちら
 『いざッ、NOW』について→こちら
posted by もりた | Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽(08年)
この記事へのコメント
うちらの年代からすると、どうしてもあのピアノは "Children" を思い出しちゃうよね。
でも私は今回のシングルかなり好きです。
これなら初回盤買っておけば良かったよ。
Posted by shooter at 2008年08月23日 16:31
どっちの曲も今回のシングルはかなり良かったね。
予約なしでも「風の向こうへ」メインの限定盤はゲットできたんだけれど、「truth」メインのは手に入れられなかった。たぶん「truth」のほうが、ドラマの主題歌だからなのかな、人気あるんだろうね。
Posted by もりた at 2008年08月23日 17:50
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