ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年08月22日
 政治の仕組みが政治的であるのと等しく、ヤクザの世界も政治的に成り立っているのであって、会社の組織も政治的であれば、医療や教育の機関も十分に政治的で、しばし学校社会でさえも政治的だといえる。しかし、人は必ずしも政治的であらねばならないのか。いや、他人に駒として使われているあいだは、そこからいくぶんかは自由になれる。だが、駒であるかぎり、誤った命令にも従順でいなければならない。これが立原あゆみの作品に一貫する論理であり、そうした論理下であらがう人々の姿が、ドラマを積み立て、盛り上げる。『仁義S(じんぎたち)』の7巻である。いよいよ関東一円会会長選挙が迫るなか、横山のもとを訪ねた仁と甲田の口から、関西は極地天道会との結託を狙う柳澤を破るべくの策が明かされる。そこで提案される計画については、まあ読み手の立場からすると、また横山のカリスマ頼りかよ、と言いたくなる部分もあるにはあるのだけれど、結局のところ、物語において政治とはもっとも縁遠い人間に〈これからはシナリオなしだ 横山 おめえの思い通りやればいい〉と判断を託すことになるのは、作品の性質上、当然といえば当然の流れであるのかもしれないし、またそのような、仁や甲田、横山といった旧いタイプの極道を大事にする人物の会談に、義郎が同席していないのも、以前から用いている演出とはいえ、なかなかに象徴的な場面をつくっている。他方、柳澤傘下の病院を潰したアキラとドクター大内は、そのため命を狙われることになるのだが、まさか、ここで則夫リタイアかよ。そりゃあ人間性の腐った、まったく愛せない野郎ではあったけれども、こいつはきっとストーリーの終盤まで生き残るんだろうね、と予想していただけに、すこし、おどろく。いや、もしかするとストーリー自体がけっこう佳境に入ってきているのかな。たしかに、『本気!サンダーナ』ですら7巻で完結しているのだから、ここまでの内容は決して短くはない。いずれにせよ、則夫のラストは、立原の過去作である『弱虫』の終盤、あのヒロシの散り際を思い起こさせる。展開はやや唐突すぎるものの、あるいは急ぎ足だからこそ言葉と裏腹な行動に含まれてしまったのは、まさしく分かちがたい愛憎の念であったのだろう。
 
 6巻について→こちら
 5巻について→こちら
 4巻について→こちら 
 3巻について→こちら
 
・その他立原あゆみに関する文章
 『恋愛』
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『本気!』文庫版
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  1・2巻について→こちら
 『極道の食卓』
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『ポリ公』2巻について→こちら
 『月の教室』について→こちら
 『喰人』1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
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