ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年12月10日
 『群像』1月号掲載。よかった、これ。これ、よかった。いま、二度言ったのは、すごくとまではいかないまでも、思いのほか良い小説であったことをお知らせしたかったからである。舞城王太郎の新作『SPEEDBOY!』は、名字のない、背中に鬣を持つ、足の速い、成雄という人物の動きによって話が進められるわけで、そのことは、同作者が以前に書いた『山ん中の獅見朋成雄』の続編的なものを期待させるけれども、作品の構造は『好き好き大好き超愛してる。』に近しい、関連づけの曖昧な短編の積み重ねが、抽象的なメッセージを形作っている。あるいは、あのなかに含まれていたSF的なパートを『九十九十九』式にリセットとリピートした感じともとれる。とはいえ、そのメッセージ自体は、異なった風だといえる。相通ずるところはあるのかもしれないが、べつの装いである。総体は、ぜんぶで7つの節から成り立っている。その内部を、成雄という同じ名前と身体の特徴を持つ、べつの主人公が生きている。それぞれは、設定の上ではリンクしているが、ストーリーの点ではちょっとずつズレている。その差異に、たぶん謎解きのような要素はなく、あったとしても熱心にこだわる必要もなくて、むしろ綴られる言葉を追ううちに、自然と、ああそういうことか、と思う。そのような体でもって伝えられようとしていることは何か。シンプルに取り出せば、主体が他者により規定されることの是非、であるのだろう。是非を問うということではなくて、是と非の両面を受け入れる姿形が、最終的には、描き出されている。落としどころがやや綺麗すぎる嫌いがあるけれども、人と人とがけっして解り合えないことは、しごく当然のことでありながら、ふつう絶望の溜め息に似た物語に収まりがちである、そこのところを、確執と断念でもってイージーに結着をつけず、未来にトスされる希望として提示した、そういう態度をこそ、高く評価したい。ところで、走者が集中力によって人智を越えたレベルに達するくだりは、小山ゆうのマンガ『スプリンター』を思い出した。

 「はてなダイアリー」のほうにもうすこし詳しく書きました→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書。
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