ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年08月14日
 打撃王凛 13 (13) (月刊マガジンコミックス)

 いま一番おもしろい野球マンガはこれだ。として、佐野隆の『打撃王 凜』を挙げることにいっさいの躊躇いはない。すくなくとも、前12巻までに渡って繰り広げられたシニアリーグ編は、最高潮に燃えた。ガッツかくあるべし、とでもいうような熱闘が、超少年級のカタルシスを寄越す。そして、ついにこの13巻より、高校野球編がスタートするのであったが、なるほど、というか、やはり、というか、こうきたかあ、いやいや、とにかく納得と感心の誘われる展開に、胸が沸く。

 甲子園での対決を約束し、やっちん(安長)とべつべつの道をゆくことになった凜の進路こそが、何よりもまず注目したい点であった。培った経験値を持ち越すにしても、リセットをかけるにしても、ここをひとつ間違えれば、その後の物語におおきな不安材料が生じてしまう。その、とてもとても大事な分岐を、こいつは盛り上がらざるをえないよね、と躍らされる方向に、びしっと舵とっているのだから、まったくたいしたもんである。

 野球マンガにかぎらず、学生ベースのスポーツ・マンガ全般において、王道的なパターンは、おおよそ二つあるように思う。一つは、弱小もしくは二線級のチームが、たゆまぬ努力の結果、試合に勝ち抜き、栄冠を目指すというものであり、もう一つは、全国クラスのプレイヤーが集められた苛酷な状況のなか、熾烈にレギュラーを争い、それがチーム全体の向上に繋がっていくというもので、『打撃王 凜』の場合、シニアリーグ編では、まさしく前者のパターンを採っていたわけだけれども、高校野球編からは、ちょうど後者にあたるパターンへとスイッチしている。

 こうした転換自体は、近年では、満田拓也の『MAJOR』においても、主人公が中学から高校にあがるさいに見られ、決してレアなケースとはいえまいが、しかし、いきなりのクライマックスさ加減が、もはや尋常ではない。

 シニアリーグでの活躍ぶりを買われ、女子校から共学に変わったばかりの常磐崎高校新設野球部の監督、岩田に直接声をかけられた凜は、甲子園出場のための厳しい試練を乗り越えるべく、〈専用グラウンド ナイター設備はもちろん 雨天時の室内練習場もある さらに全国から集まる猛者達の為に寮もちゃーんとある 週3日は午前で授業を終了し あとの時間はたっぷりと練習できる まさに毎日が野球づけの日々ってワケだ〉という環境に身を置くことを決意する。

 だが当然、凜だけが特別に声をかけられたのではなかった。学校で、グラウンドで、凜は、かつてのライヴァルたちと思いがけぬ再会を果たす。そう、あの稲葉や、雄翔、寺嶋らが、今度は、チームメイトとなり、しかも九つしかないレギュラーの枠をめぐって、しのぎを削り合う。さらに、全国で知られた有名選手もそこに加わり、お互いがお互いに牙を剥く。おそろしいまでの才能に囲まれてしまった凜は、はたしてレギュラーのポジションを掴み、なおかつ甲子園でその猛打をふるうことができるのであろうか。

 いやはや、まったく先が読めねえや。たとえば、新規の登場人物であり、凜を慕う近藤の存在に、作者が、あるいは作中のレベルで岩田監督が、どのような役割を課そうとしているのか。いっけん身体能力に乏しく、何ら優秀さは見受けられない。だが、最初の試練である「ランニングバトルロワイヤル」で大勢の選手が容赦なく切り捨てられる一方、凜とともに雑用係として部に残される。このことの意味である。このことはもしかすると、岩田監督が凜を誘うとき〈チームメイトとの友情を力に変えて強くなる 今までお前はそれで様々な奇跡を起こしてきた それは認める〉といった言葉と密接に関わっているのかもしれないし、それとはまたべつの働きが近藤には用意されているのかもしれない。

 いずれにせよ、いくらオールスター集団とはいえ、一年生のみで野球部が構成されている以上、甲子園への出場が叶えられるのはまだ先のことになるんじゃないかしら、そのあいだ、さまざまな変化が物語には訪れるに違いなく。

 12巻について→こちら
 11巻について→こちら
 10巻について→こちら
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 8巻について→こちら
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 6巻について→こちら
 5巻について→こちら
 4巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
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