ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年08月13日
 nobodycry.jpg

 サトーユキエの作品集『ノーバディ クライ』には、ぜんぶで四篇の読み切りが収められており、どれも、自意識のとがったアンテナが思わずさびしさをキャッチしてしまうような青春の風景を、きれいに磨かれたラヴ・ストーリーに落とし込んでいる。表題作である「ノーバディ クライ」は、家庭に居場所がなく、恋愛というものを知らない少女が、見ず知らずの青年に声をかけられ、行きずりの一夜を過ごし、感動もなく別れ、しかし彼とふたたび出会い、すこしずつ惹かれていく様子を描く。自分が周囲からは浮いている、溶け込めていないという思いなしや、他人と自分とは違う、誰も自分のことなぞわかってはくれないと、どこか見下している態度は、じつにありきたりなものであるが、そのありきたりであることが、たぶん今日的なリアリズムの軸なのであって、そうした狭くもある視野が、一個の関わり合いによってひらけていく様子から、前向きなエモーションが生まれている。うまくすくいとっている。その他、「恋に堕ちる」も「NO,NO,boy」も「花の咲くような」も、シチュエーションやストーリーの展開は違えど、基本的には、恋する経験を通じ、個人のうちで閉じていた回路が、他人を実感していく過程をとらまえている、といえる。他人を実感するとは、自分以外の人格を認めることでもある。それが必ずしも幸福につながるとはかぎらない。しかし、塞ぎ込んだ気持ちのなかで足踏みしているよりはマシだと提言しているかのような、そういう新鮮な孤独を、ヒロインたちの涙と表情は映し出す。いっけんポップなセンを狙っているふうな絵柄ではあるが、個人的な印象を述べれば、大昔の南Q太に似せたら、なぜか、たなかかなこになってしまったみたいな独特さを持っている。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック