
派手な内容ではないけれども、シリアスなテーマを尻込みせず、疲れることのないやわらかさで、きっちりと丁寧に描いたマンガであったよ。くりた陸の『給食の時間』の最終3巻である。全体の概要を抜き出してしまえば、家族をうまく愛することができなかった「給食のおじさん」と、家族から愛されているとうまく感じることができなかった少女が、出会い、作用し合い、お互いの傷を癒してゆく過程だといえる。もうすこし絞って述べるなら、大人には子供に教えられることがあり、子供には大人に教えられることがある、だろう。ヒロインの未来が〈子供は子供の中に放り込んだら すぐに仲よくなれるなんて 大人の幻想だよ〉と、「給食のおじさん」である健と彼の娘との関係性を指摘するあたりに、作者のスタンスがよく出ているふうに思う。意外にもラヴ・ストーリー的なハッピー・エンドを迎えたラストには、最初、よりによってそこに落とすかあ、という気もしたが、大人になれなかった大人と大人になりたかった子供が、それぞれ大人になったことをあらわす風景としては、十分に、あり、ではある。細かくちいさなエピソードをこしらえていけば、いくらでも長くできるような内容であるけれど、そうならず、コンパクトにまとまっていることで、焦点のぶれない感動を貫く。地味な作品ではあるが、いやいや、その誠実さが押しつけがましくなく、心地好い空気をつくり出しているストーリーは、高く評価されていい。
2巻について→こちら
1巻について→こちら
『オレの子ですか?』5巻について→こちら
