ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年06月20日
 1巻と2巻が同時に出た、山田秋太郎(漫画)と佐木飛朗斗(原作)の『爆麗音』は、同コンビによる『パッサカリア[Op.7]』の続編的内容であるけれども、佐木のキャリアにそくしていえば、中途半端な完結を迎えた『[R-16]』のヴァリエーションにもとれるし、さらには『特攻の拓』の、あの天羽時貞にまつわるエピソードを拡張化した面をあわせ持っている。つまり、血筋に呪われ、もしくは肉親に愛されず、苦しむしかなかった人間が、音楽によって救いを得、出会いによって喜びを得る、これを魂の必然として描く。22歳の音無歩夢は、アルバイトをしながらアマチュアでバンド活動をしている青年だが、理想と才能とが重なり合わない日々を送る。しかし、それが義指の右手で強烈なピアノを弾く印南烈と巡り会うことで、当人も、そして周囲の誰もが予想しなかった運命の扉を開くことになるのだった。もちろん天羽時貞を例に挙げられるとおり、歪んだ家族関係によって心の調律が狂った登場人物たち、というのは佐木が得意とするレパートリーだろう。歩夢(と彼の妹)は母親の独善的な態度を許せず、烈は父親の破滅とその因果に縛られている。二人の痛みと抗いが物語の通底奏音である。が、まあ、そこからどんどんとスケールが拡がってゆく様子は、これもまた佐木の作品にありがちな、最終的にはぐだぐだになっちゃうんでしょう、と想像できるようなパターンでもある。謎めいた女性がわんさか出てくるだけでも不安になる。それにしてもどうして音楽が救済になるのか。じつはこの点を『パッサカリア[Op.7]』は、いや、『[R-16]』や『特攻の拓』でさえも、十分に描いているとは言い難かった。ただ音楽は絶対的な神性であり、宇宙としてあらわれるのみであった。言い換えるなら、無条件で信じられている。信仰が描かれているにすぎない。結果、おおよその顛末が抽象的な世界に入っていくのを、さすが佐木の悪癖までとはいわないが、これがどうにかならないかぎり、いくらパートナーが変わろうとも、彼が原作をつとめるマンガに新展開はないのかもしれないな、とは思う。

 『パッサカリア[Op.7]』について→こちら

・その他佐木飛朗斗に関する文章
 『[R-16]』(漫画・桑原真也)12巻について→こちら

・その他山田秋太郎に関する文章
 『解錠ジャンキー・ロック』1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | マンガ(08年)
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爆麗音−バクレオン− 1巻&2巻
Excerpt: 佐木 飛朗斗 山田 秋太郎 税込価格 : \540 (本体 : \514) 出版
Weblog: ザッキ
Tracked: 2008-07-02 23:53