ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年12月02日
 怪より始めよ。 1 (1)

 いいないいな人間ていいな、といいつつも、ほんとうにそうなのかどうかは知らないけれど、、佐藤智一のマンガ『怪より始めよ。』は、ヒトになるために善行を重ねる二匹の妖怪の奮闘記なのであった。かつて物の怪たちは、夜の闇の世界に住んでいた。しかし科学が発達した現在では、居場所は失われ、それでも死ぬことのできない物の怪たちは、人間になることを選んだ。5つの善行を施すことによって、物の怪はヒトになれるという寸法である。市役所に勤める黒部亜紀彦は、まわりの人間から〈つくづくいい人なのねぇ〉と評されるほどに、気が小さく、几帳面で生真面目なのだが、その兄である波留彦は、反対に、ガサツかつ暴力的で、さらには助平と、まさに凸凹な性格をしている。ふたりには、誰にも言えない秘密がある。その正体こそ、人間に憧れる妖怪なのであった。ふだんはヒトの姿をしているけれども、深夜0時から日の出までは、ほんとうの姿に戻ってしまうので、現代社会では生きづらく、恋愛さえもママならない。そのため、はやく人間になりたいと善行に明け暮れる亜紀彦なのだが、何かあるたび、波留彦に足を引っ張られてしまうというわけだ。そうした努力のなかで、彼らは、良い面も悪い面も混じった人間社会の複雑さを学んでいく。そこには、単純でないがゆえに測ることのできない、命の重みがあった。と、派手さはないが、しかし、じつに佐藤智一ならではの、やわらかい視線を捨てない、コミカルな伝奇ファンタジーに仕上がっている。とくに最終話、そこはかとなくたゆたう悲しみが、涙の温度に似てあたたかい。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ。
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