
そう、『スーパージャンプ』とは、かつての『週刊少年ジャンプ』作家たちによって『マーダーライセンス牙』や『ふんどし刑事ケンちゃんとチャコちゃん』、『企業戦士YAMAZAKI』などの作品が描かれ、発表された場所でもあった。このことを高橋秀武の『トクボウ朝倉草平』は思い出させる。いや何もそれは、瑳川恵一の名で『週刊少年ジャンプ』からデビューした高橋のキャリアを指してのみ、いっているのではない。いっけんむさ苦しいタッチのなか、社会的なテーマを題材とし、マジとネタのアマルガムであるようなストーリーが繰り広げられるあたりに、先述した作品群との共通点を見つけられる。題名のトクボウとは何か。それは警察庁生活安全局特殊防犯課指導係の略称である。〈特殊防犯課…特防の仕事は起訴ではない 防犯のための行政指導だ 起訴のためには合法的な証拠が必要だ…だが 行政指導に証拠なんかいらないんだよ!〉という超法規的な理念に基づき、主人公の警視、朝倉草平が、通常の警察行為では裁ききれない悪を断罪してゆく。これがおおまかな筋立てで、すでに述べたとおり、それが、冗談半分本気半分であるような、判断を読み手のセンスに任せるかのような、独特な手つきで組み上げられているところに『トクボウ朝倉草平』の魅力はある。だいたい、朝倉の造形からしてかなりぶっ飛んでいる、ぶっ飛んではいるけれど今どきな一面だともいえる。たとえば発想の根っこは、現在放映中である『仮面ライダーキバ』の序盤に出てきた「この世アレルギー」と、そう変わりないだろう。〈この世は害虫であふれ返っている わかりますか? 害虫というのはたまに出現して我々の平穏をおびやかすものではない…右も左も害虫なんですよ わかります?〉と嘯く朝倉は、その極度に潔癖な性格ゆえ、つねに〈死にたい〉を口癖にしている。さらには〈害虫に噛みつく事で 生きている自分も結局害虫かもな…〉と思うので〈はあ――死にたい…〉のであり、〈世の中の害に対して僕はなんて無力なんだ…ああ〉と思うから〈死にたい〉のである。私生活はヘルシーで職務となればサラリーマン体質の男が、いちいち〈死にたい〉と呟かざるをえない姿は可笑しい。だが、そうした極端な性格を参照しなければ浮き彫りにならないシステムの欺瞞というものはたしかにあって、それをきっちり押さえることで、朝倉の陰湿なロジックとトリッキーな行動に、一理あるね、の正当性とカタルシスが含ませられている。それにしても朝倉に付き合うワキの人間も大変だあ、と思っていたら、まだ1巻にもかかわらず、ツッコミ役にあたる辻以外、ほとんど常識人が出てこねえじゃねえか。
