ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2017年01月05日
 Apex III

 年間ベストの類は単純に面倒がくさいから選んだりはしないのだけれど、フランスはボルドー出身のトリオ、MARS RED SKYのサード・アルバム『APEX III (PRAISE FOR THE BURNING SOUL) 』は、2016年によく聴いたものの一つである。実は『APEX III (PRAISE FOR THE BURNING SOUL) 』から遡って過去の音源も手に入れたのだが、ドゥーム・メタルのジャンルに分類されうるスローでヘヴィ、長尺の演奏を軸にしながら、シド・バレットやTHE BEATLESにも通じるようなポップさ、サイケデリックな要素の強く出ているところに、サウンドのおもしろさがあると思う。その音楽性は作品を追うごとに洗練されていき、『APEX III (PRAISE FOR THE BURNING SOUL) 』では、ひずんだ低音が特徴的である以上に、とろけそうなヴォーカルのメロディが一層魅力的になっているのであった。演奏のスタイルは異なれど、ベースが大きな役割を果たし、そこにポップであり、サイケデリックでもあるフィーリングが乗ってくるあたり、レス・クレイプールとショーン・レノンのTHE CLAYPOOL LENNON DELIRIUMを同じ棚に並べることも可能であろう。

 場合によったら、アメリカのDEAD MEADOWを引き合いに出せるかもしれないが、あそこまで籠もった音質でなければ、よりメロディアスな方向に開かれている。無論、エフェクターのたっぷりと効いた低音のうねり、ずっしりとしたリズムの重みを抜きにしては語れない。濃厚なグルーヴに足を取られ、あやしいその魔力にずぶずぶと引きずり込まれてしまうのである。『APEX III (PRAISE FOR THE BURNING SOUL) 』について述べていきたい。ヘヴィな演奏とは距離を置きつつ、同一のフレーズを繰り返すことで神秘的なムードを醸し出した1曲目の「(ALIEN GROUNDS)」からシームレスでタイトル・トラックとなる2曲目の「APEX 3」に突入し、サウンドがぐにゃりとゆがんだ瞬間(それは決して派手な展開ではないのに)異様な盛り上がりがある。低音を寄せては返す波のように持続させるベースの果たしている役割は大きい。そして、コーラスに差しかかり、いななくギター、とろけそうなヴォーカルのメロディ、これらを束ねる構成の見事さがMARS RED SKYならではの独特なイメージを織り上げているのだ。緊張感に溢れ、重たく軋んでいるのに、甘い。甘美というよりほかない。不可思議な陶酔に満たされる。

 ふおお。終盤のパートでドラムの連打にキャッチーなコーラスを重ねた3曲目の「THE WHINERY」が最高に好きである。6曲目の「FRIENDLY FIRE」におけるヴォーカルのメロディ、ギターとベースのコンビネーションには平伏させられる。ボーナス・トラックにあたる8曲目の「SHOT IN PROVIDENCE」までを含め、個々の楽曲の完成度は、非常に高い。さらには個々の楽曲からアルバムの全体像が、あるいはアルバムの全体像から個々の楽曲が設計されていったかのような統一性があり、スペーシーでいて、ドリーミーでいて、ポップ・ソングを思わせる一面を持ちながら、アシッドなロックのダイナミクスが漏れなく宿らされているのであった。ヘヴィという観点に絞るなら、ファースト・アルバムの『MARS RED SKY』(2011年)やセカンド・アルバムの『STRANDED IN ARCADIA』(2014年)にあった激しさが『APEX III (PRAISE FOR THE BURNING SOUL) 』には乏しいかもしれない。だが、洗練を経、マニアックなレベルにとどまらないアプローチとスケールとを手に入れていることは明白だ。

 バンドのオフィシャル・サイト→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(2017年)