ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2016年12月10日
 熱風・虹丸組 8巻 (ヤングキングコミックス)

 男の子とは、こうでなくちゃいけねえ、と思わされる。それがDNAに刷り込まれたものか、文化的なコードによっているのか、何らかの原体験からやってきているのかは知らないが、オールドスクールな少年マンガのバトルには、どうしたって熱くなる。燃えてしまうのである。リアリズムをかけ離れ、作中の論理が滅茶苦茶に破綻していようと、お構いなしなのは、つまり、不可能が可能に変えられることを描いているためなのだとしておきたい。正確にはヤング誌の掲載だが、今日最もオールドスクールな少年マンガのバトルを全開にしているのが、桑原真也の『熱風・虹丸組』だと散々述べてきたし、これからも述べていくつもりだ。

 ぬおおお。新展開の8巻である。激闘の末、羽黒翔丸が荒吐三郎をくだし、三代目ノスフェラトゥを斥けたナラシナ・オールスターズだったが、めでたしめでたしというわけにはいかない。虹丸組のリーダー、虹川潤は、眼に深刻なダメージを負っており、治療のために九州へと旅立たなければならないのだ。ナラシナ市を離れる潤から虹丸組と十文字誠の遺産を託された翔丸は、しかし、それを引き受けるべきかどうなのか決心がつかないままでいた。このとき、彼らはまだ知らない。翔丸を抹殺すべく、三郎の送った刺客が、すぐそばにまでやってきていた。

 流動明、朱雀優里という新たなる脅威が、物語に招き入れられるわけだけれど、その登場が非常に凶悪なプレゼンテーションを成功させているので、ぬおおお、となる。敵サイドの登場人物の格が、堰を切ったかのようにエスカレートしていくのは、オールドスクールな少年マンガのバトルにおけるパターンであろう。エスカレートを重ねながら、まだまだ魅力的な登場人物が出せてきていることに恐れ入る。明と優里には、主人公である潤や翔丸の存在感を食ってしまいかねないほどのインパクトがある。いやはや、最高にトチ狂っているのである。『熱風・虹丸組』は、おおよそのところ、不良少年や暴走族の抗争劇となっている。三代目ノスフェラトゥや荒吐三郎の登場は、大人レベルの権力と不良少年の対決を思わせたが、明と優里の場合、大人レベルの権力をも悉く壊し尽くすぐらいに圧倒的な殺意と暴力とを横溢させている。

 何せ、暴力団をロケットランチャーで壊滅させ、少年院に入れられ、少年院を出ても日本刀でケンカの相手をぶった斬ったり、ビルを爆破していったりするのだ。要するに、テロリストのイメージに近い。それが新聞紙に載る規模でナラシナ市に混乱をもたらすのだから、やり過ぎだよ、であろう。しかし、こうした難敵を前に一歩も引かないんだ、潤と翔丸はよお、という点に熱くなるのだし、燃えるのである。潤と翔丸がそうであるように『熱風・虹丸組』は、ペアやコンビの関係をテーマの一つにしており、過去、ライヴァルたちの背景にも、三代目ノスフェラトゥや荒吐家の因縁にも、それは見え隠れしていた。明と優里も、やはり、二人一組のペアとして描かれている。ここまでの物語で、おそらくは一番凶悪なペアだぞ。

 明と優里が、いかなる理由で結びついているのか。現段階では、はっきりと明かされていない。とはいえ、絆と喩えるのに相応しい厚い信頼の介在していることはうかがえる。それが二人の並んだ姿に箔を与えている。他方、潤と翔丸の他には代え難い繋がりは、男の子ならではの生き様を、無骨なドラマとエモーションとを紛れもなく象徴したものだ。もちろん、不器用な友情の表現は、オールドスクールな少年マンガのロマンでもある。十文字誠の遺産であるジャケットを受け取ろうとはしない翔丸に向かって投げかける潤の言葉を聞け。〈虹丸組と無限のジャケット… コイツはオレの命だ……… !! この世でオメェの他に誰に任せられんだよ…… !! 翔丸!!〉

 6巻について→こちら
 5巻について→こちら
 2巻について→こちら
 1巻について→こちら

・その他桑原真也に関する文章
 『疾風・虹丸組』第1巻について→こちら
 『姫剣』
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『ラセンバナ 螺旋花』(設定協力・半村良『妖星伝』)
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『[R-16]』(原作・佐木飛朗斗)12巻について→こちら