ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2015年12月23日
 The Boats of the Glen Carrig

 おそらくは世界で唯一といっていい「NAUTIK FUNERAL DOOM」(航海フューネラル・ドーム!)を標榜し続けているドイツ出身のバンド、AHABの通算4作目となるフル・アルバムが『THE BOATS OF THE GLEN CARRIG』である。AHAB(エイハブ)というバンド名が指し示す通り、ハーマン・メルヴィルの『白鯨』から受けたインスピレーションを出発点にし、前作の『THE GIANT』(2012年)では、エドガー・アラン・ポーの『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』をモチーフとしていたわけだけれど、『THE BOATS OF THE GLEN CARRIG』においては、ウィリアム・H・ホジスンの同名小説を題材に選んでいる。いずれにせよ、海洋の深遠であるようなイメージを、どうサウンドの成り立ちへと変換するか、という部分に本質があることに変わりはない。一貫性がある。

 葬送曲にも似たアトモスフェリック(名状しがたい薄暗さ)は、フューネラル・ドームの大きな特徴であろう。AHABの場合、それを押さえつつ、演奏のスタイルや楽曲の展開にゴシック・メタルやプログレ・メタルに近いものがあって、さらには近年におけるドゥーム・メタルのジャンルに支配的なヴィンテージ色を突出させず、むしろモダンであると受け取れるところが少なくはない。以上の持ち味は、作品を経る毎に洗練されていき、微細でもある叙情性とドラマの明確化をもたらすことになったのだな、と『THE BOATS OF THE GLEN CARRIG』は思わせる。一方、音楽性は異なれどTOOLやMASTODONなどに通じるものもあるのでは、と感じさせるのだった。

 クリーンなヴォーカルのパートは以前にも増しているが、デス・メタルのようなグロウルも(語義矛盾するようだけれど)表情を豊かにしてきている。バックの演奏もまた、ファースト・アルバムである2006年の『THE CALL OF THE WRETCHED SEA』の頃に比べたら、ダイナミズムをはっきりさせたものとなっていて、引きずるようなギターのリフやドローン(持続低音)を愛でたいマニアには物足りなくなったかもしれないし、アンダーグラウンドならではの無骨さが減じたと見られるかもしれない。しかし、一概には、ヤワになった、とはいえない魅力がある。10分に及ぶ楽曲の並んだ大作指向は、相変わらずである。そのなかから劇的とも雄弁とも喩えられるヴィジョンの浮かび上がってくることを何よりとするのであれば、『THE BOATS OF THE GLEN CARRIG』は、到達と呼ぶのに相応しい。

 バンドのオフィシャル・サイト→こちら
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