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2015年09月28日
 たいへんよくできました。 4 (マーガレットコミックス)

 今日、学園ものが描かれるとき、所謂「ぼっち」というライフスタイルが取りざたされることは多い。もちろん、社会の比喩であるような(あるいはミニマムな社会そのものであるような)学校生活における疎外感は、古くからフィクションの世界で重宝されてきたテーマである。それがしかし、必ずしも特殊なものではなく、一般化され、文字通りにライフスタイルと換言することが可能な様式を持ったため、かつてよりもキャッチーな題材となりえたのではないかと思う。

 佐藤ざくりの『たいへんよくできました。』は、正しく「ぼっち」として中学生までを過ごしてきた少女が、ヒロインの作品だ。ヒロインの野々山ぼたんが、高校進学を機に自分を変えようとし、闇雲に奮闘する様子を描いているのだった。が、友情やサークルの形成を通じながら、共同体の価値を見直すというよりも、恋愛をモチベーションとした一点突破を大々的にしている。少女マンガのロマンスに相応しいカスタマイズを、あくまでも中心としているのである。

 前作の『マイルノビッチ』が(実際にはそうではないけれど)「ビッチ」をヒロインにしていたとしたら、『たいへんよくできました。』では「ぼっち」がヒロインになっているということはできる。しかし、『マイルノビッチ』と同様、三角関係の緊張状態と一組の男女のデリケートな繋がりにいかなるドラマを与えるかということに、本質はあるのだとはっきりしたのが、前巻(3巻)の展開だ。ぼたんと因縁のある男子生徒をフィーチュアし、その横槍をきっかけに、王子様の役割にあたる甘藤春人とぼたん自身のお互いに対する意識の在り方、恋愛感情を明確にしていたのだった。

 実はこの4巻で最も美学を匂わせているのは、結果的に噛ませ犬となってしまった桜玲一郎の言葉と態度である。〈“自分なんかより相手の事”って言ったくせに 俺も全然できてなかった〉ことに気づき、ぼたんのことを想って〈あんな顔… 見たくないんだよ 結局 君の 君は… 幸せの方にいてほしい…〉と身を引く彼の姿は、それが物語の重要な転換の導きとなっているところを含め、『たいへんよくできました。』の本質がロマンスであることの証左にほかならない。

 恋愛をモチベーションとした一点突破を大々的にしていると先に述べたが、ぼたんの気持ちを後押しするクラスメイト、苺の存在からは、友情の優しさがうかがえる。一方、過去のエピソードでは、ぼたんの(苺との)友情は、甘藤にサポートされるものであった。それがここでは、ぼたんの(甘藤との)恋愛をサポートするものへと回されている。作品の構成において、恋愛の比重が何よりも増してきているのだ。

 いずれにせよ、「ぼっち」からの離陸が『たいへんよくできました。』の指針であったとするならば、ほとんど完遂されたといえる。そのあとで、どこに話を進めるのか。テーマをどうするかのレベルで佳境に入った。

・その他佐藤ざくりに関する文章
 『おバカちゃん、恋語りき』
  7巻について→こちら
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『otona・pink』2巻について→こちら