ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2013年03月30日
 SOUL 覇 第2章 3 (ビッグ コミックス)

 武論尊が三浦健太郎と組んだ作品に『王狼』とその続編『王狼伝』というのがある。ジンギス・カンの正体は源義経だった説にタイムスリップのアイディアをミックスしたものである。池上遼一とのタッグによる『SOUL 覇 第2章』のエンディングを目にしながら思い出したのは、実はそれであった。いや、もちろん、SFとして描かれているわけでは決してない。そうではなく、古代アジア大陸の歴史に日本人が介入すること、そして、介入した日本人はあくまでもカリスマの影武者であるような役割を果たしていることが共通しているのだ。

 しかしまあ、題名をあらためてからわずか3巻で完結した『SOUL 覇 第2章』である。これがスケジュール通りだったのかは知らないが、『覇-LORD-』との違いを簡単に述べるとすれば、要するに赤壁の戦いをメインに据えた次世代編だったのだろうと思う。もし『北斗の拳』に喩えるとすると、リンやバットが成長して以降、あるいはリュウが登場して以降のパートに相当する。古い世代と新しい世代のバトン・タッチを描いているところがある。いや、バトン・タッチは世代間のみならず、「劉備」や「孫権」のブランドをめぐって行われてもいる。関羽が燎宇から「劉備」の名を奪おうとし、本物の孫権を殺した周瑜が自らを「孫権」と称するくだりもある。

 てっきり「三国志演義」の翻案と見られていたものが、なんと「三国志」中の「魏志倭人伝」の空想化だったと明かしているのが『SOUL』でもある。この意味において、中国史を題材としているにもかかわらず、日本人(倭人)を主人公にすることができたともいえる。いずれにせよ、大胆な解釈が施されている点に変わりはない。「王」ではなしに「皇」を抱き、その下に民主制らしき形態を敷いた「蜀」があって、宗教国家として一丸となった「呉」があり、それらに対抗する「魏」がある。これが『SOUL』にとっての「三国志」である。無論、「蜀」が代替しているのは戦後日本のイメージだと容易に推測されるし、おそらく、大衆を改革しようとした燎宇や関羽の姿には『サンクチュアリ』や『HEAT-灼熱-』のテーマが入り込んできているのではないか。

 ただ、常元の扱いは最後まで定まらなかったな。いや、徹底したゲス野郎ではあったのだけれど、物語の駒としては弱かった。常元ばかりではない。終盤、諸葛亮や馬超のぶっ飛んだアピールは決して悪くはないのだが、正直、初期の呂布や董卓を越える人物はついに発明されなかった。

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 『覇 -LORD-』
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・その他武論尊(史村翔)に関する文章
 『SILENCER』(画・ながてゆか)1巻について→こちら
 『DOG LAW』(画・上條淳士)について→こちら
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