ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2013年03月01日
 SILENCER 1 (ビッグ コミックス)

 ながてゆか、史村翔。一部の人間からしたら(自分のことなんだが)強力なタッグによって描かれる『SILENCER(サイレンサー)』の、その1巻である。『銀の聖者 北斗の拳 トキ外伝』に史村(武論尊)がどれだけ関わっていたのかは知らないけれど、両者の持ち味がハード・ヴァイオレントなサスペンスの中によく生かされた内容にこれはなっていると思う。毒をもって毒を制すかのごとく、犯罪者に対し、手段を選ばず、ばんばん銃撃を繰り広げるヒロインの様は、女性版『ドーベルマン刑事』のようでもあるし、彼女に備わった妖しいフェロモンと激しいアクションは、現代版『蝶獣戯譚』のようでもある。が、いずれにせよ、あくどい連中が蔓延り、秩序のくたくたになってしまった世界が、まるで死線として存在するとき、それに殺されないでいるためのギラギラした眼差しが、極端なまでにカリカチュアされた不敵さを可能にしているわけだ。

 いやまあ、実にぶっ飛んだ奴だね、桂木静というヒロインは、であろう。なにせ、研修先のニューヨーク市警で、マフィアのボスをあっさり銃殺。さらには北朝鮮や中国のシンジケートにも容赦なく顔を突っ込んでいく始末である。無論、悪と見なせば、ヒット、ヒット、ヒットであって、このヒットはヒットマンのヒットと同義なのだったが、さすがに殺しすぎだよ。その、一人無法地帯ぶりは常軌を逸しているぜ、と言うよりほかない。ともあれ、明らかな問題行動を咎められることなく、むしろ同僚からは一目置かれ、日本に帰国した彼女が、今度は警視庁を舞台に八面六臂の活躍(でいいんだよね)を見せるというのが、おおよそのところ。なのだけれど、桂木が配属される生活安全対策分室にはもう一人、伊波というアウトロー・タイプの刑事がいて、これが彼女を陥れようとしたり、なかなか一筋縄ではいかない。

 先般、平松伸二が加納錠治を墓場から蘇らせたが、『SILENCER』にはそれへのアンサーを期待させるものがある。序盤、北朝鮮や中国のアンダーグラウンドが出てきたのを見、史村はもしかしたら『覇-LORD-』とは別のレベルでアジア史をやろうとしているのか、あるいは『HEAT-灼熱-』あたりの変奏を組み込もうとしているのかもしれない、と思われもした。今後、そうなっていく可能性がありえないわけではない。しかしながら、伊波が登場して以降の展開は、もっと率直にピカレスクのイメージを押しているふしがある。生活安全対策分室は、要するに『ドーベルマン刑事』における警視庁特別犯罪課のような特殊性を代替しているのだ。桂木は女性でありながら、初期の加納と同じく、史村が得意とする内面や体温を隠したタイプの主人公である。がゆえに、無慈悲にも感じられる。その特徴的なヒロインをながてがとても艶っぽく肉付けしている。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(2013)