ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2012年08月17日
 L DK(10) (講談社コミックス別冊フレンド)

 渡辺あゆの『L・DK』も10巻である。まさかここまで続くとは思わなかった。いや、思っていなかったのは、結局のところ、見知らぬ男女の同居ものというワン・アイディアにそれ以上の広がりは生まれないだろうな、と踏んでいたからなのだが、しかし実際にはワン・アイディアでは終わらず、男性側の過去を知る人物の横槍であったり、優しい噛ませ犬の登場と三角関係への発展や、女性側の父親による条件の提示など、少女マンガのラブコメに特有な(アリガチな)パターンを次々に投入して、弾みをつけていったことの成果が、つまりはこうした連載の長期化なのであって、その勢いは今もなお継続している。要するに、だれていない。

 とりわけ10巻においては、主人公である葵と柊聖を取り巻く環境が、高校三年への進級によって大きく様変わりしている点に工夫が見られる。ここで行われているのは、ほとんどリセットと呼ぶのに近いシチュエーションのチェンジであって、同時に登場人物を複数増加させることに成功しているのである。葵は、萌という序盤から出てきている友人と一旦離され、いくらかボーイッシュなタイプである波留という友人と色気があり派手目なタイプのかえでという友人を作る。新しいクラスで新しい友人たちとの、しかもそれがヒロインを含めてタイプの違った三人組となるような関係は、この種のジャンルにお馴染みのものだとしてしまって差し支えがない。過去には萌とのあいだで、一対一の、友情の緊張状態を体験させられた葵だが、今回は三人組のなかの一人として、やはり少女マンガのラブコメに特有な(アリガチな)パターンを演じさせられているのである。もちろん、柊聖と同じクラスになったことで、以前とは異なったコミュニケーションが必要とされ、それが二人の間柄にとってカンフル剤のように機能しているのも看過してはなるまい。

 当初、ワン・アイディアを軸としていた『L・DK』は、たとえ類型的であろうともカンフル剤になりそうなパターンを次々と引っ張ってくることで、ストーリーが膠着してしまうのを免れてきた。だが、一時しのぎの建て増し住宅みたいに不格好になるのみであったなら、もっと早く作品は飽きられてしまっただろう。結果としてそうなっていないのは、最も重要な箇所、土台となる部分を決して壊したり、ずらしたりはしていないためだ。換言すると、葵と柊聖のロマンスは他の人間に秘密でなければならない、このしごく単純なアトラクションをいかに埋もれさせず、キープさせるか。本題は常にはっきりとしている。勢いがだれないことの理由はとても明快なのである。

 5巻について→こちら
 4巻について→こちら
 2巻について→こちら
 1巻について→こちら 

・その他渡辺あゆに関する文章
 『オトメゴコロ』
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『キミがスキ』
  2巻について→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(2012)
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