ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2012年01月15日
 TRACE 2 (アース・スターコミックス)

 こうした新展開が意図するものとは一体何なのか。NASTY CATの原作と雨松の作画で送られる『TRACE』の2巻である。が、1巻と同じ舞台、設定を共有しながら、全く別のエピソードへと話は飛ぶ。当初の主人公、神山ユウを見舞った絶望をよそに、人間と異能者であるトレイスの相剋は更なる局面を迎える。妻子のために働く月城カイは、30年前に突如として人間を襲いはじめたトラブルという謎の脅威や、人間の体内組織を超人のレベルに変質させてしまうトレイス化の奇病とは無縁に、そして平和に生きてきたはずだった。どれほど社会が深刻になろうとも自分の家族だけは絶対に幸福でいられると信じていた。しかし、いつだって悲劇は忽然としていて容赦がない。まさか、予期せずトレイスの能力に目覚めてしまったがため、カイは現在の生活を捨てなければならなくなってしまう。会社を辞めさせられ、妻子との隔離を余儀なくされるのだった。政府の管理下に置かれるのは仕方なかった。受け入れるよりほかない。だがしばらくすると、研究施設で検査を受けなければならないとされていた妻のハルカから連絡が途切れ、関係者は質問に一切答えなくなってしまう。ハルカと娘のサナを心配するカイが、あらぬ容疑をかけられ、指名手配されたのは、それから間もなくのことだ。追われ、あまりの理不尽さに為す術をなくした彼に、稲葉アキラと名乗る男がスカウトの声をかけた。果たしてこれが1巻のエピソードとどこでどう繋がっていくのかはまだわからないのだけれど、アキラとカイがとある計画を実行すべく、トレイスの仲間を集め、個性的なチームを結成していくという筋書きの、大変陽性な描かれ方は、今日におけるフィクションのマナーからすれば、プロセスとは正反対の暗い結果を予期させる。アキラの意味深長な発言はその手の伏線にも思われる。いずれにせよ、無事にカイが家族を取り戻してめでたしめでたし、は難しかろう。そう考えるなら、ユウが再登板してからが本当の本編になるのかもしれない。設定や描写に謎めいた部分は多いし、先は随分と長そう。とはいえ、フックのしっかりと効いた内容は十分な魅力を湛えている。また、シリアスなストーリーのなかで、カイの養父やアキラの上司に代表されるようなやさしい大人の存在がきらりと光っているのは、このマンガにとって大きな美点になりえている。


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(2012)
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