ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年10月02日
 セツ 1 (マンサンコミックス)

 世が世であれば、『週刊漫画サンデー』に木葉功一が、というのは意外な連載であるように思われるかもしれないが、おそらく今はそういう時代ではないのだ。しかし相変わらずの個性、独特なタッチ、ダイナミックなアクションは健在である。女子400m走、世界陸上の金メダリスト、天翔セツは、知名度、人気の高さから渋谷警察署の一日署長を引き受けることになったのだけれども、その日偶々、赤坂で銀行強盗が発生、凶悪な犯人たちが多数の犠牲者を出しながら逃亡する場面を目の当たりにしてしまう。持ち前の脚力で、果敢にも、あるいは無謀にも犯人を追跡しようとするセツは、懸命な行動のなか、不思議な能力を開花させるのだった。以上が発端であって、結果、警察官となった彼女がさまざまな犯罪者と次々対峙していくというのが、この1巻より見えてくる『セツ』の物語であろう。かくして、過激な銃撃戦が繰り広げられるのであれば、作者の得意とするところなのだが、ここでは、あくまでもそのキャリアからしたらの話だが、比較的それは抑えられていて、かわりに人情噺のような部分が大きくなっているのは、たしかに『週刊漫画サンデー』調であるやもしれない(いやいや)。とはいえ、狂人と紙一重の超人もしくは超人と紙一重の狂人が、エッジの立ったヴィジョンを持たされ、道徳や倫理を含め、この社会の現実性と逆立ちしたかっこうになっているのは、従来のとおり。たとえば、主人公であるセツの、研ぎ澄まされた感覚が、他の人間には認知されない星のイメージを、犯罪者の姿に映し出すのもそうであるし、犯罪者の、一線を踏み越えてもなお悪びれない表情が、ある種の迫力を得ているのもそうだ。正直、絵柄のレベルではなく、ストーリー自体にもっとダイナミズムが欲しい気がするものの、紛れもなく、木葉功一というマンガ家の特殊な技量は発露している。

・その他木葉功一に関する文章
 『フルーツ』について→こちら