ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年08月21日
 この『チュー坊 日記』は、コンビニ向けのアンソロジー『ヤングキングα』の「新不良聖書」に1話から10話までが収録されている。南勝久と門尾勇治の師弟がタッグを組んでヤンキー・マンガを描くとなれば、両者のキャリアを知っている者からすると、期待せざるをえないところなのだったが、まあ南の監修で門尾が絵を描きましたよ、といわれたなら、まったく納得のいくものであって、ひじょうに安定した内容をキープしてはいるのだけれども、あと一つ、化学反応と呼ぶほどのサプライズは見受けられない。要するに『ナニワトモレ』の、とくに初期の、あの、大阪弁のギャグが勢い任せなのにも似た独特なテンポで、中学生ならではの狭い世界が、思春期が、そして成り上がりが、描かれていると思われたい。大阪市内でも知られた不良校、北邦中学に入ったサッピは、スケベ心は一人前だが、それまでケンカをしたことがなかった。しかし、成り行きから一年生同士のいさかいに巻き込まれていく羽目になる。そこにマドンナ的な存在であるサラへの恋慕や、小学校よりの連れ合いであるリュウジやカメとの友情が入ってき、おおまかなストーリーは出来上がっている。北邦中学の内部は、西小出身者と東小出身者に分かれており、双方の対立が派手なパートのメインだろう。なぜケンカ慣れしていない主人公が他の少年たちよりも強いのか。体が頑丈だったから、というのは、小学校を卒業したばかりの人物を題材にしている以上、ひじょうに単純ではあるものの、理には適っている。割合オールドスクールなつくりの作品だが、基本的な設計図がちゃんとしているので、白けてしまう部分はきわめて少ない。

・その他門尾勇治に関する文章
 『Don't give up』について→こちら
 『真犯人』
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『欺瞞遊戯』について→こちら

・その他南勝久に関する文章
 『なにわ友あれ』
  12巻について→こちら
  10巻について→こちら
  9巻について→こちら
  8巻について→こちら
  7巻について→こちら
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  1巻について→こちら 
 ここ最近、ヤンキー・マンガと呼ばれるような作品はさすがに増えすぎなのであって、正直、手に余りつつあるのだったが、携帯電話向けに配信されたコンテンツをコンビニ版の単行本にまとめた『ヤングキングα』の「新不良聖書」などはまさしくその飽和点とすべき佇まい、このなかからジャンルの新機軸やビッグ・ヒットが生まれるとは到底思えないのだけれども、まあ商売として成功すればいいですね、といったところである。

 さてその「新不良聖書」に収められているのが、俳優の宇梶剛士が原作をつとめ、『タイガーズ』の白鳥貴久が作画を担当した『COOL TEAM』で、1話から9話までが読めるのだが、評価を厳しくすれば、類型的な描写や展開が多く、さほどのトピックを含んではいない。

 内容は、二千人のメンバーで構成されるチーム「ゼブラ」の頭(ヘッド)、立花了を主人公にし、暴力で回るような青春を、ギャグとシリアスの相半ばするテンションのなかに描く、といったものである。了に関しては〈後にこの少年は役者になるがそれはまた別の話である!〉と、作中で解説されているとおり、おそらくは宇梶自身をモデルにしている部分もあるのだろう。たしかに、ケンカは強く、人望も厚いが、色恋にはからっきしな彼の性格は、前時代的な、軟派になりたいのになれない硬派のイメージを、それが長所でもあるふうに再現している。しかし、一部のファッションや登場してくる女性の人物は今日的にデザインされており、自伝の要素や深い時代考証を読む必要はなくて、たんにバッド・ボーイのロマンをなぞらえているにとどまる。

 了とはまったく違い、セックスに屈託のない「ゼブラ」のナンバー2、乾鷹志が良い味を出している。彼と主人公の、バディものであるような側面もまた、この手の作品におけるセオリーといえるものの、いやじっさい、物語にとってももっともユーモラスで人間味を感じさせるのは、不良少年の誠実さを(わざわざ)説こうとする点より何より、そこなのだったが、本筋は、ナンバー3の海江田が暗躍し、構成員二千人の説得力のないまま、巨大なチームの権力闘争に発展していきそうな気配を孕む。