ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年08月05日
 BENGO! 4 (ジャンプコミックスデラックス)

 全4巻で完結したところから振り返るに、きたがわ翔が弁護士マンガを描いた、以上の感想を持てなかったかな、というのが、この『BENGO!(ベンゴ!)』である。ラストまでの内容にはいくつかの変節があったように思う。松下弁悟、若林航大という二人の主人公の因縁、対立、協力、葛藤の法廷ドラマを経、最終的には〈弁護士がバーテンをしながら気軽に相談に乗る こんな面白いバーがあったら市民は大喝采するんじゃないかと思ったんです〉このような発想のもと、弁護士バーを開いた「SHOWSO」の面々が、困りに困った依頼者の相談に応じていくスタイルとなった。序盤と終盤とでは、ずいぶん物語の形式が違っているのは、紆余曲折というか、試行錯誤というか、結局はうまい具合にアイディアが安定しなかったふうにも見えてしまう。職業ものにおいて定番とすべきパターンを引き受けるかどうか。この一線の上で、迷い、ずるりとこけ、落っこち、着地点もあまりはっとこない。

・その他きたがわ翔に関する文章
 『ガキホス』
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『デス・スウィーパー』
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『刑事が一匹』
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
 蒼太の包丁 25 (マンサンコミックス)

 グルメ・料理マンガには長期連載化していく作品が少なくはないが、大河のようなドラマを充実させている例は多いと言い難い。それというのはたぶん、ショートなワン・エピソードを基本に、文字どおり、回を重ねることが第一義となっているものが大半だからであって、幅の広い時間進行は結果的に生じているにすぎないためなのだと思う。つまりは当初の設計図にそってつくられた構造に建て増しの物語が与えられているわけで、作中人物の性格に、成長とはべつの意味で、当初の設定とのぶれが出てしまうことが珍しくないのもそのせいだろう。こうした皮肉をおそらくは意図的に回避すべく、作中人物同士の相関性と背景のストーリーを厚くしているのが『蒼太の包丁』である、というのは以前にいったような気がするのだけれども、いやじっさい、25巻に入った現在も、主人公の成長や周囲の感情、環境のゆるやかな変化に、最大の特徴がある。「富み久」の親方は、年末も忙しいというのに、どのような思惑があってか、花ノ井が自分で開いた店「花ノ井」の手伝いに蒼太を行かせる。それもまた、蒼太の、料理人としての、新たな糧となっていくのであった。というのが、ここでのおおよそである。カウンター越しに並び、互いに包丁を握った花ノ井と蒼太のコンビネーションは、正しく今までのストーリーがあってこそであるし、主人公をめぐる女性たちの対応も同様に、過去の積み重ねによっている。単発のエピソードを見るなら、読み手を感動させるために、作中人物を泣かせる、こういった手法のあざといものもあり、そちらに関してはさほど褒めないのだったが、「花ノ井」と競合する「松井」の大将と花ノ井の対面にはまったくべつの緊張があって、なかなかに印象深い。男と男の、職人と職人の、歳の差に関係のないプライド、言葉では通じ合えない部分が、よく出ている。

 24巻について→こちら
 22巻について→こちら
 20巻について→こちら
 18巻について→こちら
 17巻について→こちら
 16巻について→こちら
 15巻について→こちら
 14巻について→こちら
 13巻について→こちら
 12巻について→こちら
 11巻について→こちら
 10巻について→こちら
 9巻について→こちら
 8巻について→こちら
 7巻について→こちら
 6巻について→こちら