ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年06月28日
 さて。芦原妃名子の『Piece』であるが、4巻に入り、急展開というか新展開が訪れる。これまで秘せられていた真実が、意外な人物の口から語られるのである。おそらくは物語の印象自体を左右しかねないため、詳しい言及は避けるけれども、もしかすれば浦沢直樹的な手法でアダルト・チルドレンが描かれているにすぎないのではないか、と思わせる。そのへんに多少の危惧を抱くし、いやたしかに序盤よりミステリやサスペンスのコードを引っぱってきているマンガである以上、唖然とするようなはったりが必要なのは間違いないのだったが、しかしそれによって作品の幅がずいぶんと狭くなってしまったようにも感じられるのであって、結局は、生まれと育ち(遺伝と環境)の問題に集約されるのかよ、と口を挟みたくなってしまう。もちろん、アダルト・チルドレンの傾向であったり生まれや育ちに端を発する困難は、同じく芦原の『砂時計』においても重要なテーマを果たしてはいた。これを踏まえるならば、作家性とでもすべき切実さを認められるものの、あれとはまたパターンが違い、きわめて人工的もしくは人為的な設定を出してきているため、問題提起の深さのみが筋書き化されている印象を受ける。とはいえ、この『Piece』があくまでも少女マンガのジャンルに置かれ、展開されている点は、考慮に入れておかなければならない。そしてたぶんそこに、希望が、救いが、幸運が、やがて刻み込まれることになるのだろう。どういうことか。少女マンガにとって、希望とは、救いとは、幸運とは、おおよその場合、ロマンティックなドラマを通じ、孤独な運命を変えていく、運命の変わっていく様子を指す。これはすでに水帆と成海の関係に発芽しつつある、あるいは水帆の一方的な感情のなかに備わりつつある。たとえば、4巻からもっとも明るく光っているセリフを拾おうとすれば、絶対に、疑いなく、次の、これだ。〈感じていることを“伝える”努力をしてみる 楽観的な夢を見よう 全力で創造しよう チープでも安っぽくても 子供っぽいねって笑われても 別にいい 「現実なんて こんなもんだよ」と 固く 自分を閉じてしまわないように “夢のような現実”を 強く 思い描く〉。それはまるで、孤独な運命は変えられる、と信じる、願いのように響く。

 3巻について→こちら
 2巻について→こちら
 1巻について→こちら
 
・その他芦原妃名子に関する文章
 『月と湖』について→こちら
 『砂時計』
  10巻について→こちら
  8巻について→こちら