ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年06月24日
 ちぇんじ123 12 (チャンピオンREDコミックス)

 平均未満な少年の価値が、破格な美少女との出会いや、複数の異性との関係を通じ、底上げされるという、男性向けのラヴ・コメディにあってオーソドックスなパターンに、多重人格、バトル、ヒーロー指向などの要素を盛りだくさんにしながら、荷崩れせず、バランスもよく、坂口いく(原作・絵コンテ)と岩澤紫麗(漫画)の『ちぇんじ123』は、物語の最後まで見事に完走した。最終の12巻である。この作品の、とくに男性性に託されたテーマは、オタク的な資質を持った小介川に、ヒロインであるひふみの父親であり、最強の格闘家である流河竜也が、こう告げるセリフに託されているふうに思う。〈俺なんかより ムコ殿の方が一番無敵に近い所にいると思うぜ〉、〈北海道で言ってたよな 生きていくのに人が人を殺す必要なんて無い 戦場や殺(や)らなきゃ殺(や)られる状況それ自体が正義じゃないって〉、〈戦うよりも友達になる お互い へつらう事の無い本物の友達を作り続ければ 敵なんていねえ 文字通りの無敵ってヤツだ〉、〈お前さんは その絶対不変の正義を貫けばいい〉と、そしてそれは、じっさい全体のストーリーにおいて、ほとんど取り柄のないように見える小介川がどうして多数の人間から愛されるのか、を裏付ける理由となっている。言い換えるのであれば、やさしい心根がそのまま当人を支える芯の強さになっていた、ということなのであってそれが、特異な症状のせいでつねに自分に不信を抱かざるをえなかった少女の、まさしく欠損を補う役割を果たしてもいたのだ。うららかなエンディングを含め、整合性は高く、坂口にとっては、裏方ではあったものの、ひさびさの会心作だろうし、岩澤にとっては出世作と呼ぶに相応しい。

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