ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年06月09日
 At Night We Live

 ああ、これは間違いなくFAR(ファー)の再結成作にして最高傑作であろうよ。このすばらしさを導き出すため、バンドは一時の解散を経なければならなかったのだとさえいってしまいたくもなる。まさか、いや、まさしく98年の『WATER & SOLUTIONS』を越える感動が、通算5枚目のフル・アルバムとなる『AT NIGHT WE LIVE(アット・ナイト・ウィ・リヴ)』に宿らされているのである。

 とにかく、ヴォーカルのジョナー・マトランガとギターのショーン・ロペスがもう一度タッグを組んだことで、類い希なるケミストリーの生じているさまは疑いようなく、清かさと激しさが理想的に同居するなか、胸をいっぱいにさせるようなエモーションがたちまち編まれていく。

 ソロ活動はもとより、ONELINEDRAWINGやNEW END ORIGINAL、GRATITUDE等のユニットを通じ、研ぎ澄まされるほどにデリケートな歌声を披露していたジョナーが、ここにきて、かつてないくらいに力強いのはやはり、自身のREVOLUTION SMILEで硬質なヘヴィ・ロックをプレイし、DEFTONESやWILL HAVENのアルバム制作にプロデューサーとして関わったショーンの、そのスタンスを汲んだところが大きいだろう。両者のキャリアが幸福な再会をのぞんだ。結果、これぞFARであり、しかし過去のFARを逸したサウンドが響かされている。

 ベースのジョン・グーテンバーガーとドラムのクリス・ロビンによって支えられたグルーヴは、バンドの一体感を何よりも強調的にしており、1曲目を飾る「DEAFENING」からして、メンバー4人の全力が見事な輝きをつくり出すのだった。暗い色をスタートのラインに引きながらも、メロディは伸びやか。固い拳でぐっと押すかのような圧のかかった演奏がきらめき、ガッツを誘い、続く「IF YOU CARED ENOUGH」が代表的なとおり、どのナンバーも基本の構造はシンプルであって、同時にキャッチーなラインを備えているのだけれども、奥底からたしかな誠実さを覗かせている点に、このバンドの表現力を見つけられる。

 そしてそのことは、落とされたトーンを通じて〈Crowided and lonely lonely〉というフレーズであったり〈Touch me to find me〉というフレーズにパセティックな印象の綴られた3曲目の「WHEN I COULD SEE」や、雰囲気をポップにしているのに〈Give me a big, true, actual reason / To believe you / Give me a reason〉というコーラスが切なさをたっぷりとたたえた4曲目の「GIVE ME A REASON」において、よりいっそうの恵みをもたらしている。

 そばに孤独を置いたまま、想像上に希望を探し、憐憫を、できるなら励ましを、あらかじめ定められた世界像に太く書き加えようとしている、こうしたイメージを『AT NIGHT WE LIVE』には持てるのである。

 もちろん、アグレッシヴであることとメロウであることのコントラストが、そのままダイナミックなスケールを得ている5曲目の「DEAR ENEMY」以降も、現在のFARをFARたらしめているハイ・ポテンシャルが、ナイーヴな心の揺らぎを、たんなる屈託にはとどまらせない。アルバム中もっともパワフルな8曲目の「BURNS」は、MY CHEMICAL ROMANCEでいえば「I'M NOT OKAY (I PROMISE)」型の、要するに、現代的なアンセムのフォーマットであって、たいへんカタルシスにあふれている。同じくアップ・テンポな10曲目の「ARE YOU SURE?」も、若返りしたかのようにエネルギッシュだ。

 本編のラストにあたる11曲目の「THE GHOST THAT KEPT HAUNTING」まで、あるいはその後に用意されたボーナス・トラックの「PONY」を含め(日本盤はさらに「I'M DOWN」を追加収録している)、すべてが充実しているのだから、うれしい。間違いなくFARの最高傑作であるし、目覚ましく、美しく、逞しいアルバムだと思う。

 バンドのオフィシャル・サイト→こちら(音出ます)

・その他ジョナー・マトランガに関する文章
 『AND』について→こちら
 来日公演(05年12月9日)について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(2010年)