ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年03月05日
 Phoenix

 単純にサウンドのイメージは、エピタフ傘下であるヘルキャット・レコード所属のポップ・パンク、あるいは若手のいかにもLA出身であるようなパワー・ポップ、と言って察せられる範囲内に置かれてはいるが、いやしかし、かくいう文脈を差っ引いてみたところでまずは何より、その、フレッシュなメロディの、どこか甘く、どこか熱く、どこか切なくて、まざまざとした弾道に胸を打たれる。ああ、キャッチーに弾けてゆく演奏が心地好さを増し、体を揺らしたくなるなか、ついついぐっとくるものがあるぞ、と思わされるのである。05年のファースト・アルバム『WELCOME TO THE WORLD OF ORANGE』の段階ではまだ、中心のメンバーが十代だったせいか、荒削りであっても初々しさの直接的な疾走性でのりのり、押し切る部分がつよかった。もちろんそれは必ずしも低く見積もられるものではなかったろう。だが、07年のセカンド・アルバム『ESCAPE FROM L.A.』を経、このサード・アルバム『PHOENIX』に至っては、以前の勢い、エネルギーを失わないまま、より幅広に音楽的な思慮を掴みつつ、そしてすべての要素が、繰り返しになるけれど、フレッシュなメロディの、まっすぐに響き渡り、うずうずしてき、感情を動かされるほどの魅力へ、総和されている。ベースを構えながらフロントをとるジョー・デクスターのヴォーカルがよい。日本盤のライナー・ノーツで行川行彦が、彼の才能と歌声をGREEN DAYのビリー・ジョー・アームストロングの名前を引き合いに出しながら賞賛していて、うんうん、たしかに頷かされるものがあるのだったが、そこで一般的に想起されてくるのはもしかしたら、『NIMROD』もしくは『WARNING』以降のGREEN DAYでありビリー・ジョーではないか、という気がする。要するに、ジャンル上の方便を抜きに立派なのだ。そのことは、アコースティカルに綴られる6曲目の「I WITH」や、スローなテンポからダイナミックに盛り上がる10曲目の「FALL INTO THE SKY」、ルー・リードをカヴァーしたうつくしい12曲目の「PERFECT DAY」などで、とくに実感される。当然、ORANGEというバンドの本領発揮であるようなアップ・テンポのナンバーにおいてそれは、脳天気な空騒ぎとは異なるベクトルを得、歌われるエモーションを十分に信じられるだけの説得力を持ちうる。ラヴ・ソングみたいでありハッスル・チューンみたいでもある5曲目の「HOLD ON TO YOUR HEART」が、ひじょうに好き。バッキングはスピードを抑え、印象的なフレーズの並びによって、あかるく染まりきれない気分が次第に上昇されてゆく様子を、力強く叙情している。焦がれ、手を伸ばしても届かない。それでも諦めだけは引き受けまいとすることの誠実さを思う。

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posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(2010年)