ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年03月01日
 キミのとなりで青春中。 / 4 (フラワーコミックス)

 ああ、これはひじょうによいラブコメである。ねえ、教えてよ、胸がときめき、恋することの痛みを教えてよ、という要請に対し、ユーモア交じり、たいへん鮮明なタッチで答えている。彼は〈………………なんつ――か…自分の中にある気持ち 言葉にしなけりゃなかったことにできるのに ってのは…すげーわかるから〉と言い、〈――――なんか 七瀬 見てたら 他人事と思えなくて 大事なモン失くすのがこわくて ウソつこーとする気持ち すげ――――わかるからさ〉と言う。なるほど、片想いのプロフェッショナルは、ときおり片想いのよきアドヴァイザーになりうる。しかしそのことが誤解となって、自分たちの恋愛にいざこざを起こし、せっかく近づいた気持ちを傷つけてしまったなら、本末転倒じゃないか。藤沢志月の『キミのとなりで青春中。』が、前巻から引き続き、この4巻で描いているのは、せっかく両想いになれたはずのカップルが、いや両想いになったばかりだからこそまだ不安のたくさんなカップルが、小さなすれ違いをきっかけ、真剣交際することの難しさを、あらためて認識する様子だろう。幼馴染みの慶太とようやく恋人同士になれた美羽であったが、その喜びも束の間、ほんらいはもてる彼がべつのクラスの女子、七瀬と抱き合っているのを見、疑い、信じ切れないせいで、巨大な不安に苛まれてしまうのだった。一般的には、まあね、と思われてしまう展開には違いないものの、これがある種の説得力、キュートでありつつエモーショナルな引っかかりを持ちえているのは、小さなつっかえが大きな障害になるという、恋愛の遠近法を適確に採用、再現しているからにほかならない。遊びじゃないので余裕もない。深く考えるあまり、生真面目、狭量に陥ってしまう、そのような心境を、初心な高校生の恋愛を通じ、コミカルに共感の幅をひろげながら、まっすぐ指しあらわしている。たしかにこの手のマンガにパターン化されたくだりはすくなくないし、はっきりいってここから先どれだけエピソードのヴァリエーションをつくれるか危うい。以前はそれをステレオタイプと判じてしまったが、いや今なら実直な手つきの、ひじょうによいラブコメであると思う。

 1巻について→こちら

・その他藤沢志月に関する文章
 『ラブファイター!』
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら