War All the Time - Thursday
オープニング・アクトを務めたENDSWECKが「金曜日なのにサーズデイ」とMCで繰り返し口にしていたが、12月6日、代官山SPACE ODDにて、悲願のTHURSDAY初単独来日公演を観た。THURSDAYのライヴを目にするのは、2004年に行われた日本版のWARPED TOUR以来である。正直な話、この15年の間にバンドは第一線から退いてしまったところがある。いや、実際に一度は解散し、再結成後も新しい作品を発表してはいないのだけれど、しかし、強烈なエネルギーをまとったパフォーマンスは、中年に差しかかったはずの彼らと現役の二文字とを固く結びつけるのに十分なものだった。
開演直前、CAT POWERがBGMでかかり、流れる車窓のように撮影された日本の郊外がスクリーンに映し出された。物寂しいムードが漂うなか、ステージに登場したメンバーたちが最初のナンバーに選んだのは「FOR THE WORKFOCE, DROWNING」である。『WAR ALL THE TIME』(03年)の冒頭で炸裂していたあの掻き毟るほどの焦燥がまざまざと再現され、居ても立ってもいられなくなる。初っ端からすごい勢いで湧き上がるものがある。続いて「CONCEALER」「AOUTOBIOGRAPY OF A NATION」「CROSS OUT THE EYES」「PARIS IN FLAMES」と『FULL COLLAPSE』(01年)からの楽曲が並んでいく。THURSDAYがエモやスクリーモの急先鋒とされていた頃のそれらは、しかし、時が経とうと本質を違えてはいない。衝動に後押しされながら、熱量をぶち上げる一方、明るさとは真向かいのパセティックなイメージが描き出される。アジテーションの激しさとメランコリックなまでの繊細さとが同居したサウンドの類まれな真価を証明するがためにバンドはパフォーマンスを繰り広げているかのようでさえあった。
余談だが、今回のツアーには元LOST PRORHETSのスチュアート・リチャードソンがベースで参加している。THURSDAYのヴォーカル、ジェフ・リックリーとNO DEVOTIONというバンドを組んでいる縁でもあるのだろう。NO DEVOTIONは、ニュー・ウェイヴのエッセンスをふんだんに携えたスタイルになっていたけれど、THURSDAYにおける内省的な側面も、やはりルーツのどこかにニュー・ウェイヴの存在が横たわっているのだと思う。それがハードコアなどに由来したギターの鋭いリフやスリリングでダイナミックな展開を併せ持っているあたりにTHURSDAYの素晴らしさはある。本編のラストを飾ったのは『WAR ALL THE TIME』のタイトル・トラックである「WAR ALL THE TIME」だ。アグレッシヴなパートを抑える代わり、暗く、冷ややかと形容してもいい音色に覆われている。ゆったりとしたテンポで進むナンバーである。しかし、堪えようとすればするだけ漏れてきてしまう怒りや悲しみのようなものが次第に束となり、正しくエモーショナルというのに相応しい波濤を呼び起こす。生々しいライヴのヴァージョンでは、その劇的な印象がより深く極まっていた。
2度のアンコールを含め、およそ1時間、ショーとしては決して長い類ではない。本音を述べると、もっと観ていたかった。それでも物足りなさを覚えなかったのは、内容の濃さに圧倒されたからであろう。完全燃焼に近い満足度がありましたね、といえる。研ぎ澄まされた緊張感は、バンドの音楽性と密接であって、それが全編に張り詰めていたのだった。THURSDAY、まったく枯れていない。