
註)ショーの内容について、ある程度踏み込んでおります。ネタバレを気にする方はご注意ください。ふだんこのような但し書きをしないのですが、長い日程の公演がまだはじまったばかりの時期なので。
昨日(2月8日)は、そう、『赤西仁 Star Live 友&仁 You&Jin』を観に日生劇場へと向かったのだった。が、いやしかしこれが、良くも悪くも、赤西仁というカラーが如実に反映されたステージとなっていたように思う。
昨年、KAT-TUNのコンサートで披露されたソロ・ナンバー「WONDER」(クリスタル・ケイとのコラボレイト)からうかがえたとおり、ひじょうに洋楽指向が強いというか、モダンなブラック・ミュージック、R&B、ヒップホップのスタイルを大幅に取り入れるていでセット・リスト、ステージのおおよそは構成されていたのである。今回のために用意された楽曲のほとんどが英語詞であったのも、無意味に気取っているわけではなく、おそらくは、どのような音楽性を実現するか、のモチベーションをダイレクトにしていたためだろう。
個人的にはすっかり、「WONDER」の、そのセンス、低音の響き、ヴォーカルのかっこうよさに魅了されてしまったタイプだから、否が応にも興奮し、体を揺らさざるをえない部分が多かったのだけれども、ショーの全体を敷衍してみれば、もうすこし緊張感があふれかえっていてもよかった。わっと幕が開くのではなしに、ゆるゆる、じょじょに熱を入れてゆくオープニングはともかく、ファンの思い入れとはべつのレベルで、圧倒的なカリズマに驚異させられるぐらいの展開、ハイなヴォルテージが臨界を越えてゆくほどの演出はなかった。まあ、まだ公演二日目であるし、今後に調整される点が出てくるのかもしれないし、はりきりが必ずしも目に見えず、どこかリラックスしたムードを漂わせているところが、じつに赤西くんらしい、といえば、たしかにね、頷くよりほかないんだ。
印象深かったのは、英語詞のオリジナル・ナンバーが連続してゆく前半である。これがKAT-TUN本体からは離れたソロ公演であることの醍醐味は、ほとんどそこに集約されていたとさえ感じられた。先ほど述べた「WONDER」が披露されたのも同じ流れのなかであって、KAT-TUNのシングル『Love yourself 〜君が嫌いな君が好き〜』に収録のソロ・ナンバー「A Page」や、同じく『DON'T U EVER STOP』に収録の「LOVEJUICE」もばっちり決まっており、正直、このままの調子で最後までいったらけっこう自慢になるぞ、と期待させられたのだった。
ただし、いささか時代的な傾向を踏まえ過ぎたせいか、オートチューンを使用した楽曲ばかりであったのは、せっかくの生の舞台で歌声を堪能するには、功となっていない。ぶっちゃけ、はじめて耳にするナンバーが多い以上、オリジナルのヴァージョンがどのような音程であるのか知れないので、じっさいにヴォーカルをとっているのか、はたしてリップシンクでしかないのか、自分がいた客席からはほとんど判別がつかなかったからね。シンガーとしての赤西仁を高く買っているだけに、残念を覚えるものがあった。
他方、バックをフォローする外国人メンバーに、しばしばコーラスを委ねたり、ラップを任せたりしていたことに関しては、決して悪い印象を持たない。それはつまり、前記したとおり、どのような音楽性を実現するか、意識の面に由来しているのだと解釈される。もちろん、オートチューンだってそうじゃん、といわれれば、そうなのだけれど、たんにバランスの問題にすぎないのであって、もっと剥き身の歌声を響かせるシーンがたくさんあって欲しかった。
しかして「LOVEJUICE」のあと、趣向に変化が訪れる。「BANDAGE」によって、ダンサブルな路線を離れ、ロックのモードへと突入していくのだった。LANDSとしてはすでにラスト・ライヴが行われしまったため、『Olympos』の楽曲ってやったりするものかしら、という疑問があったのだが、やっぱり、やった。だが、今回のヴァージョンはLANDSではない。あくまでもバック・バンドにFiVeを伴ったヴァージョンとして聴かれるべきだろう。上里くんと牧野くんのリズム隊は相変わらずタイトであって、低音のグルーヴをよく通らせる。中江川くんのギターがソリッドに決まる。そして石垣くんのキーボードの入り方に、LANDSとは異なる音色が預けられていたように思う。
続く「care」を経、第一部が終了、30分の休憩が設けられる。どのような事情でそれが必要とされているのかはわからないが、さすがに30分のインターヴァルは長すぎるよ、と言いたかった。第一部、第二部ともに、一時間弱のセット・リストでは、それほどのクール・ダウンを欲しがれない。
ここで空いた間を、しかし埋めるのではなく、生かすかのごとく、第二部は落ち着いたテンションで、はじまる。外国人メンバー数人と赤西くんが、椅子に腰掛け、輪になって歌うのは、レナード・コーエンのカヴァー「Hallelujah」だ。ほら、こういうところにも洋楽指向が見て取れるわけなのだけれども、ジェフ・バックリィのヴァージョンを挙げるまでもなく、アーティストの資質が直接に問われるナンバーなので、小節ごとにヴォーカルのパートを分けるというアイディアは、たしかに気が回ってはいるものの、ここでこそ赤西くんの独唱が聴きたかった、というのが正直なところ。「Hallelujah」のあともカヴァーを披露、そもそもはウィノナ・ジャッドのナンバーで、エリック・クラプトンのヴァージョンで知られる「Change The World」である。これは赤西くんが穏やかさの混じったエモーションでしっかり歌いあげる。
MCのコーナーがやってくるのは「Change The World」の余韻が静かに残るなか、地べたに座り込んだ赤西くんが、感謝の言葉などを述べ、観客をいじり、そして次からの楽曲が公演のタイトルにかけ、友人たちとの共作である旨を伝える。
まずは映画『BANDAGE』で共演した金子ノブアキが作曲に関わった「Paparats」で、なるほど、フラットなインダストリアルの質感からラウド・ロックのダイナミズムに変化してゆくナンバーには、そのニュアンスが備わっている。次いで錦戸亮とのレコーディング風景がVTRで流れると、アップ・テンポで賑やかな「Hey Girl」がスタートする。明るい曲調に合わせ、ダンサーや着ぐるみがアメリカン・コミックふうの寸劇をバックで織り成すのが、とてもキュートだ。全体的にセクシーな場面が多いなか、ここが一番カラフルにはじけていた。
そうして「Hey Girl」が止むと、しばらくのあいだ、ダンスのセッションが繰り広げられることとなる。さまざまなジャンルのダンスを、外国人のダンサーを左右にしながら、次々と移り渡ってゆくのだが、ステージ前方に張られた薄いスクリーンとライティングによって描かれるマジカルな光景が、目に楽しく。この演出は、続く「ha-ha」でも効果的に発揮されていた。そして「ha-ha」から「My MP3」へ、前半のようにダンサブルな路線にいったん戻すと、いよいよショーも終盤に差し掛かる。
終わりのときが近づいているのだ。ステージの後方、巨大な球状のセットが組まれており、その上部に立ち、歌われるのは、せつなさをいっぱいに込めたバラードの「Eternal」である。ああ、ここにきてついに、赤西くんのヴォーカルが、感動的な叙情を孕む。そこはかとなく悲しんだメロディに、泣いてもいいし、胸を熱くしてもいい、そうやって誰かのことを想ってもいい、ささやかな報いが、許しが、しかし確実に満ちていくみたいであった。
ラストを飾ったのは、序盤にも披露された「Keep it up」であり、ふたたびこのアッパーな楽曲が持ってこられたことで、大団円の箔がつく。バックのメンバーも総出、一人一人の笑顔が眩しく。やがて皆、ステージを去る。残念ながら、どれだけの拍手が再登場を求めようが、アンコールはなかった。
いくらか注文をつけてしまったのは、期待値が高かったからで、それを抜きにすれば、総じて楽しいパフォーマンスだったと思う。じっさい盛り上がるべきところは最高潮に盛り上がったし、ファンとしては、こういう機会はあればあったで、とても嬉しい。しかしながら、ソロ公演において支配的な、個の強さ、を、まざまざ確認できたかというと、少々辛くならざるをえない。今の段階では、翻って、KAT-TUNの、ピースの、一つであるときのあの輝きが、尊くなる。
・その他LANDSに関する文章
『Olympus』について→こちら
「BANDAGE」について→こちら
・その他KAT-TUNに関する文章
『Break the Records -by you & for you-』について→こちら
「RESCUE」について→こちら
「ONE DROP」について→こちら
「White X'mas」について→こちら
『KAT-TUN III - QUEEN OF PIRATES』について→こちら
「DON’T U EVER STOP」について→こちら
「LIPS」について→こちら
「喜びの歌」について→こちら
『Cartoon KAT-TUN II You』について→こちら
『Live of KAT-TUN “Real Face”』DVDについて→こちら
「REAL FACE」について→こちら
DVD『KAT-TUN LIVE Break the Records』について→こちら
DVD『KAT-TUN LIVE TOUR 2008 QUEEN OF PIRATES』について→こちら
コンサート『不滅の10日間ライブ KAT-TUN TOKYO DOME 2009』(09年・東京ドーム)
6月15日の公演について→こちら
5月22日の公演について→こちら
5月18日の公演について→こちら
コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2008 QUEEN OF PIRATES』(08年8月5日・東京ドーム)について→こちら

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